spect1975のブログ

門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

これが頭痛の種類・最新の治療対策完全版!! Part.2

No.11-2 頭痛シリーズ②

目次(Part.2は5.頭痛の有効な治療法以降の項目が記述されています。)

  1. 頭痛にはどのような種類があるの?
    ⑴一次性頭痛
     a. 緊張型頭痛
     b. 片頭痛
     c. 群発頭痛
    (2)二次性頭痛
  2. 一次性頭痛と二次性頭痛はどう判別されるの?
  3. 小児や思春期に起こる頭痛はどういうものなの?
    ⑴小児および思春期の片頭痛
    ⑵小児および思春期の慢性連日性頭痛
    ⑶小児および思春期の二次性頭痛 
  4. 頭痛の予防療法というのはどう言うものなの?
    (1)緊張型頭痛の予防療法
    (2)片頭痛の予防療法
    (3)群発頭痛の予防療法
  5. 頭痛の各タイプごとに有効な治療法を教えて!
    (1)緊張型頭痛の急性期治療
    (2)片頭痛の急性期治療
    (3)群発頭痛の急性期治療
  6. 妊娠・授乳中の治療はどうしたら良いの?
  7. 薬剤に頼らない治療法はあるの?
  8. 何かおすすめの漢方薬はある?
  9. 頭痛のまとめ!!

5.頭痛の各タイプごとに有効な治療法を教えて!

(1)緊張型頭痛の急性期治療
緊張型頭痛の治療方法は、頭痛のタイプによって異なります。たまにしか頭痛が起こらない「稀発反復性緊張型頭痛」では、基本的には特別な治療を必要としません。しかし、「頻発反復性緊張型頭痛」と「慢性緊張型頭痛」は、日常生活に支障をきたす場合が多く、これらのタイプでは治療が必要となります。治療方法は、急性期治療と前述の予防療法に大別され、それぞれ薬物療法と非薬物療法があります。
a.薬物療法
主にアセトアミノフェン製剤や、ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs、例:ロキソプロフェン)などの鎮痛剤を使用します。筋弛緩薬のチザニジンも用いられることがありますが、トリプタン製剤は適応外であり使用しません。ただし、鎮痛剤の頻繁な使用(週に2〜3回以上)は、薬物乱用頭痛のリスクがあるため注意が必要です。慢性緊張型頭痛でも、ストレスなどの心理的要因が多いため鎮痛剤が効かないことが分からず多用することで、薬物乱用頭痛を引き起こしやすくなります。
b.非薬物療法
精神療法や行動療法、理学療法などがあり、一部予防療法と類似したものとなります。
①精神療法および行動療法
・バイオフィードバック療法
認知行動療法(マインドフルネス)
・リラクセーション
催眠療法
理学療法
・運動プログラム(頭痛体操)
・マッサージ、頚部指圧

(2)片頭痛の治療
急性期の治療は主に薬物療法が中心となります。理想的な治療薬は以下の条件を満たすことが求められます:速効性、一貫した効果、再発の防止、追加投薬の不要、副作用の最小化、経済的な負担の軽減。
【治療薬の一覧】
カロナールアセトアミノフェン/市販品有)
効果はやや他より劣るものの、安全性と価格を考慮し、軽度ならば第一選択薬の一つとされています。
②非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs):ボルタレン(ジクロフェナク)、ナイキサン(ナプロキセン)、セレコックス(セレコキシブ)、ハイペン(エトドラク)、ポンタール(エフェナム酸)、ロキソニン(ロキソプロフェン/市販品有)など
片頭痛の痛みや随伴症状を効果的に抑えます。安全性が高くコストも低いため、軽度から中程度の痛みに推奨されます
③クリアミンA、クリアミンS(エルゴタミン・カフェイン配合剤)
頭痛の発生が少なく、早期の服用で効果が得られる場合、またはトリプタン製剤でも頭痛の再発が問題となる場合に適しています。
④トリプタン製剤:イミグラン(スマトリプタン)、ゾーミッグゾルミトリプタン)、レルパックス(エレトリプタン)、アマージ(ナラトリプタン)
片頭痛の急性期治療薬として、NSAIDsよりも推奨されることが多く、経済的負担を除けば理想的な治療条件をほぼ満たします。ジェネリックも利用可能です。服用タイミングは、軽度の症状または発作初期の服用が効果的です。
⑤制吐剤:プリンペラン(メトクロプラミド)、ナウゼリンドンペリドン
悪心や嘔吐を伴う際に不可欠で、他薬剤の吸収を改善する効果もあります。ただし、制吐剤のみだと効果に限りがあるため、他の鎮痛薬との併用が望ましいでしょう。
⑥その他の薬剤
オピオイド(麻薬性鎮痛剤):トラムセット(トラマドール/アセトアミノフェン配合剤)
効果は認められていますが、長期に渡り続けることで薬物依存のリスクがあり、トリプタン製剤の効果を低下させる可能性があるため、慎重に使用すべきです。
漢方薬長年の使用により安全性は確認されており、各自の体質に合わせると最大限に効果を発揮します。詳細は後述7.の項で説明します。
【NSAIDsとトリプタン製剤の比較】
トリプタン製剤は、効果が高く再発率が低いことが確認されています。ただし、特有の副作用では「胸部症候群」があり、症状としては首や胸などの圧迫感や息苦しさ不快感が現れます(ほとんどは自然消失します)。効果や再発率、有害事象を総合的に考慮すると、トリプタン製剤の使用が推奨されています。また、両方の薬を併用すると効果が高まることが報告されています。
【薬剤の選択】
片頭痛急性期において治療薬を選択する上で、一般的には「step care(段階的治療)」と「stratified care(層別治療)」の考え方があります。個々の経済的状況や薬の相性を考慮し、適切な選択肢を見極めていくと良いでしょう。
・Step care(段階的治療):最初は安全性が高く、費用のかからない薬から治療を始め、効果が見られない場合にトリプタン製剤などのより効果的な治療法に移行します。
・Stratified care(層別治療)片頭痛の痛みや日常生活への影響の程度に応じて、治療薬を選択します。

(3)群発頭痛の治療
現在では、スマトリプタン皮下注射酸素吸入による治療が最も推奨されています。
a.スマトリプタン皮下注
通常用量を投与後、5分後ですでに74%の方に頭痛軽減が見られ、10分経過すると3割強で頭痛消失が認められました。よって、かなりの即効性があり、高い有効性があるとも言えます。
b.酸素吸入
吸入後3分から改善が見られ始め、平均15分間程度の吸入で頭痛消失が認められています。現在において在宅酸素療法は、群発頭痛発作が平均月1回以上あれば、保険適用が認められています。

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6.妊娠・授乳中の治療はどうしたらいいの?

妊娠中や授乳中の女性が片頭痛治療を必要とする場合、特に注意が必要であり、医師や薬剤師の指導のもと慎重に治療を行わなくてはいけません。
(1)妊娠中の治療薬
a.妊娠中の急性期治療薬
アセトアミノフェン製剤:急性期で治療が必要な場合には、経験的に最も使われています。ただし、長期使用で弊害の可能性もあるため、安易な漫然とした使用は避けるべきです。
・メトクロプラミド:妊娠中の悪心に対しても積極的に使用する薬剤です。
・トリプタン製剤:妊娠初期における使用による明確な催奇形性の増加の報告はありません。使用時には潜在的なリスクと利益を慎重に比較する必要があります。
b.妊娠中の予防療法
妊娠中では多くの方が、片頭痛の発作の回数が減少するため、予防薬を必要としなくなることが少なくありません。どうしても必要であればβ遮断薬最低限(30mg/日以下)のアミトリプチリンが用いられます。
(2)妊娠中避けるべき薬剤
NSAIDs:特に妊娠後期では胎児に動脈管の早期閉鎖が起こりうるため、服用してはいけません。
エルゴタミン製剤:子宮収縮作用があるため、通常用いられません。
バルプロ酸:胎児が発達障害を起こすリスクがあるため、避けることが推奨されます。やむを得ず服用する方は、用量依存であることを考慮します。
・ACE阻害薬およびARB:胎児奇形や他のリスクもあり、妊娠中は禁忌で服用してはいけません。もし、妊娠に気づいたら直ちに中止してください。

(3)授乳中の治療
一般的に使用されている片頭痛治療薬の多くは、授乳中でも使用可能だと言われています。また、RID(※5)が10%未満であれば、乳児への影響が少なく比較的安全です。
a.授乳中の急性期治療薬
アセトアミノフェン製剤やNSAIDsのうち、薬剤が母乳へ入っていく割合が少ない(さらに言うならRIDが少ない)薬剤を使用します。具体的に言うと、アセトアミノフェンイブプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェンなどです。
トリプタン製剤については、使用可能ではあると言われています。その中でも厚生労働省の一環である「妊娠と薬情報センター」においては、スマトリプタンとエレトリプタンが授乳中でも安心に使用できる薬と位置づられています。
授乳中の吐き気には、母乳に移行しにくいドンペリドンが推奨されています。
b.授乳中の予防療法
RIDが低い薬剤である、β遮断薬(プロプラノロール、メトプロロール)アミトリプチリンが推奨されています。

(4) 授乳中に避けるべき治療薬
母乳移行率やRIDが高く10%以上ある薬剤は控えるべきです。具体的には、鎮痛剤のアスピリンオピオイド(麻薬性鎮痛剤)、エルゴタミン製剤、β遮断薬ではアテノロール、抗てんかん薬ではラモトリギンやゾニザミド、筋弛緩薬のチザニジン、制吐剤であればメトクロプラミドがそれに当たります。

(※5) RIDはrelative infant doseの略語で、相対的乳児薬物投与量のことを言います。これは、母親が摂取した薬物の量を、体重に対してどれだけの割合で赤ちゃんが摂取するかを示す値を指します。この値が高いほど、赤ちゃんの摂取割合が高い薬剤と言うことです。

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7.薬物に頼らない治療法はあるの?

人によっては痛み止めなど苦手に感じたり、妊娠して薬が心配な方、薬物乱用頭痛で鎮痛剤を中止または減量しなければいけない方、そのような人に対して、有効性が期待できる治療法をいくつか紹介します。

⑴行動療法
頭痛は心や社会に関わる原因が多く存在します。ストレスがその主たるものです。現状を認識して、それらを断つことで症状を軽減します。
・リラクセーション:ラクセーションはストレスなどの心理的な反応を和らげることで、身体機能を自らコントロールし身体の緊張を緩和するものです。そうすることで、疲労や痛みなどを軽減させる様な多くの利点があります。
・バイオフィードバック療法:知覚しにくい反応や変化を機材などに測定し、それを視覚や聴覚により捉えやすい形にしてフィードバックする治療法です。トレーニングを反復することで、機材を使用しなくても自分で制御することを目標とします。
ラクセーションとバイオフィードバック療法を組み合わせることで、β遮断薬のプロプラノロールと同等の予防効果が見られ、より長期の有効性も期待できます。
認知行動療法心理的なアプローチによるもので、頭痛の引き金となる行動やパターンを特定し、それらを変えることで改善する治療法です。

(2)理学療法有酸素運動や鍼治療によるものです。この治療法は他よりもややエビデンスの面で不足しています。

(3)ニューロモデュレーション:この治療法は、特定の神経に対して微弱な電気刺激を与えることで、頭痛の頻度や強度を抑えるものです。特に慢性的な頭痛がある人や、従来の治療法で効果が見られなかった人にとって有効な選択肢となります。

(4)健康食品・サプリメントマグネシウムコエンザイムQ10、、ビタミンB2などが挙げられます。
マグネシウム片頭痛患者の脳では、マグネシウム不足が起きていると言う報告があり、補充療法が試されています。マグネシウム500mg/日を用いた試験で、バルプロ酸と同等の予防効果との結果も出ています。
コエンザイムQ10単独で用いた試験では、300mg/日摂取により頭痛発作頻度が50%以上減少したとのことです。一方、100mg/日摂取の試験では、効果があまりなかったものもあります。厚生労働省では推奨量が30mg/日、上限量が300mg/日を目安としているようなので、サプリとして相当量を摂取しないと効果がないことになります。また、コエンザイムQ10を30mg/日と脂肪燃焼サプリとしてよく使われているL-カルニチンを500mg/日とを併用しても、かなり有用な予防効果があることも報告されています。
ビタミンB2リボフラビン):反復性片頭痛患者に対して、ビタミンB2を400mg/日を3ヶ月間続けた試験では、発作日数や頻度が明らかに減少した結果が出ています。別の試験において、100〜200mg/日を摂取し続けたものでは有効ではなかった報告もあります。必要摂取量が1.2〜1.6mgであり、通常の食事ではとてもまかなえる量ではなく、頭痛の予防としては相当量を摂取する必要があります。

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8. 何かおすすめの漢方薬はある?

漢方薬については、まず1種類を1〜2ヶ月間試して有効性を確認します。変化がない場合は、他も試すことになります。また、複数を試したいという場合は、生薬の複雑な兼ね合いもあるため漢方医と相談してからにしましょう。

(1)呉茱萸
効果発現時期として2週間以内が多いことにより、片頭痛に対してはより早い効果が期待を持てます。慢性頭痛においては、片頭痛や緊張型頭痛にかかわらず高い有効性があります。特に、片頭痛の中でも、視覚前兆を伴う症例に対してより効果があったようです。また、片頭痛の慢性期には定期的な服用が必要ですが、急性期には頓服的な飲み方も効果はあるとのことです。

(2)桂枝人参湯
主には、胃弱傾向な慢性頭痛患者に対して効果的です。ただし、甘草が多めに入っているため、浮腫や血圧上昇などの偽アルドステロン症には注意が要ります。

(3)釣藤散
釣藤散は、慢性頭痛に対して高い効果を示すことが確認されており、特に動脈硬化が原因の慢性頭痛に有効です。この漢方薬は緊張型頭痛に対しても推奨され、定期的な服用が効果的とされています。また、胃が弱い方にとっても比較的安全に使用できるという特徴があります。

(4)葛根湯
葛根湯は通常、短期間の使用や必要に応じた頓服が一般的です。特に肩こりを伴う緊張型頭痛においては、頓服または朝1回の服用が推奨されています。ただし、葛根湯の構成生薬である麻黄にはエフェドリンが含まれており、これが副作用を引き起こす可能性があります。そのため、胃腸が弱い方、心疾患の既往症がある方、または不眠の傾向がある方は、使用に際して特に注意が必要です。

(5)五苓散
透析に伴う頭痛の一因として脳浮腫が考えられるため、水毒を解消する五苓散が効果的です。この処方は、透析患者のみならず、片頭痛、緊張型頭痛、および二次性頭痛など、多様な頭痛に対しても広く用いられています。通常は定期的に服用しますが、天候による頭痛の悪化が見られる場合には、服用量を増やすか、定期的に服用していない場合には、必要に応じて随時服用することも適切です。

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9. 頭痛についてのまとめ!!

  • 頭痛の治療を行う(受ける)際には、自分の頭痛がどのタイプか知ることがとても重要となる。タイプではない治療薬使用により、逆に害になることもある。
  • 頭痛は大きく、原因疾患のない一次性頭痛とある二次性頭痛の二つに大別される
  • 一次性頭痛には最も多い片頭痛を始めとして、緊張型頭痛、群発頭痛がある
  • 二次性頭痛には外傷、感染症精神障害によるもののほか、脳卒中など生命に関わるものが原因となることもある。
  • 鎮痛剤の飲み過ぎによる薬剤乱用頭痛もあるが、正しいケアで対処で予防できる
  • 緊張型頭痛の予防療法ではアミトリプチリン、治療は主に鎮痛薬のアセトアミノフェンやNSAIDsが有効、トリプタン製剤は無効。
  • 片頭痛の予防療法には最新の抗CGRP抗体なども出たが、かなり高価。治療は、NSAIDsなどの鎮痛剤、トリプタン製剤が中心。
  • 群発頭痛にはスマトリプタン皮下注、酸素吸入が有効。予防療法はCa拮抗薬のベラパミル、他炭酸リチウムなどがある。
  • 薬物によらない治療もあり、リラクセーション、バイオフィードバック療法、ニューロモデレーションなど様々な治療なものがある。
  • 漢方薬も体質に合えば有効であり、1種類ずつ1〜2ヶ月を目安に試行する。

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