spect1975のブログ

門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

日本初!内臓脂肪減少薬「アライ」!!その実力は如何なるものか?

No.10 日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」、その前評判は意外なことに?

日本で初めての内臓脂肪を減らす市販薬として、大きな注目を集めている「アライ」。ネットニュースやSNSでは、その導入が話題となっています。しかし、海外から個人輸入などで先行して使用している方々の間では、その評判は必ずしも良好とは言えないようです。このギャップは、どのような理由によるものなのでしょうか?

目次

  1. 「アライ」はどのようにして脂肪を減らすの?
  2. 「アライ」はどんな人に向いているの?
  3. 「アライ」の購入はどうするの?
  4. 「アライ」はどの程度の効果が出るの?
  5. 「アライ」によって何か害は出るの?
  6. 「アライ」と一緒に飲んではいけない薬はあるの?
  7. 「アライ」についてのまとめ!

 

1. 「アライ」はどのようにして脂肪を減らすの?

端的に言うと、「アライ」は食事からの脂肪吸収を妨げることで体内脂肪を減らします。食事から摂取される脂質は、糖質など他の栄養素と同様に長い鎖状で存在し、これらは酵素によって分解されて体内に吸収されます。脂質は特に、リパーゼという酵素によって分解されますが、「アライ」はこの酵素の働きを抑制し吸収されずに便として出されます。食事から摂取した脂質のうち、1/4程度を排出するようです。このため、脂質を多く摂取する人にとっては効果的です。一方で、甘いものが好きで内臓脂肪が気になる人には、糖質の分解を阻害する効果はありませんので、効果が薄いかもしれませんね。

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2. 「アライ」はどんな人に向いているの?

「アライ」の効果は一般的にどのような人に適しているのでしょうか?資料によれば、「アライ」は腹部に脂肪が蓄積している方の内臓脂肪を減少させる効果があるとされています。したがって、明らかにお腹周りが気になる方や、ビール腹のような見た目がある方にとっては効果的かもしれません。さらに、大前提として、「脂肪減少効果は基本的には食事や運動などの生活習慣の改善によるものである」とのことより、今まで生活習慣を正しているのになぜか痩せない・・・という人が特に向いているようです。一方、腹囲が普通であっても、体型をもう少し引き締めたいと考えている方には効果が少ないかもしれません。ここでいう「太め」とは、男性で腹囲が85cm以上女性で腹囲が90cm以上という基準です。したがって、思ったより平均よりも相当に腹囲の大きい方という印象がありますね。

「アライ」の作用メカニズムを考慮すると、そこまで腹囲の大きい方でなくても、揚げ物やスナック菓子など脂肪の多い食品をよく摂取する方に対しては効果が期待できるかもしれないですけど、どうなんでしょうか?

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3. 「アライ」の購入はどうするの?

「アライ」は要指導医薬品というカテゴリーに属しています。要指導医薬品は、対面販売が義務付けられています。つまり、Amazon楽天市場などのインターネット経由では購入できず、薬剤師が常駐する薬局や薬店で、薬剤師からの説明や指導を受けた後に購入する必要があります。
購入の条件として、以下の3つが挙げられます。まず、①18歳以上の方、②特定の腹囲基準を満たす方(先述の項目を参照)、③運動や食事などの生活習慣改善を実践している方です。特に条件③では、購入前の1ヶ月間の生活習慣の改善がなされているかの記録の確認が求められます。さらに購入後も生活習慣の改善記録を記録する必要があるようです(これらの条件を満たさない場合、次回の購入ができないないようです)。
ここで個人的には、おいおい面倒くさすぎじゃね?と感じました。そもそも自分でこういう管理ができる人は、体型を保てているでしょう。むしろだからこそ、このような条件をつけているのは分かりますが。正直「アライ」を必要としている方は、生活習慣改善チェックを適当にやるかやらないのではないかと思っています。

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4. 「アライ」はどの程度の効果が出るの?

なにはともあれ、効果がどれほどなのか?が一番気になるところでしょう。同メーカーによると、摂取後4週間から効果が期待でき、1年間かけると内臓脂肪面積で約21.5%、腹囲で4.8%の減少(※1)が確認されているとのことです。腹囲はそこそこですが、内臓脂肪に関してはなかなかの減少率なのではないでしょうか?

以下メーカーHPより、プラセボ(偽薬)群と比較した表を記したので参考にしてください。

内臓脂肪面積 12週間 24週間 最終評価時
プラセボ -2.28% -5.78% -5.45%
アライ群 -6.79% -14.10% -13.50%
腹囲 4週間 12週間 24週間 最終評価時
プラセボ -0.17cm -0.87cm -1.63cm -1.53cm
アライ群 -0.62cm -1.38cm -2.49cm -2.41cm

※1:  1年間継続して「アライ」の服用と生活習慣の改善を行なった場合。上記表における臨床試験の最終評価は24週間継続後、12週間生活習慣の改善のみを行った場合です。

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5. 「アライ」によって何か害は出るの?

「アライ」の成分であるオルリスタット自体は、体内にほぼ吸収されないため化学的な意味での害は少ないです。肝障害や腎結石などが副作用としてあるようですが、気に留めておくだけでそこまで気にしなくても良いでしょう。

むしろ気にすべきは、日常生活における実害です。「アライ」は海外では1998年から販売されており、海外からはすでに購入自体はできます。ネット上でそれらの方の服用した感想を見たのですが、相当やっかいな面もあることになるようです。以下それらの感想を踏まえて実害を挙げていきます。

⑴(放屁を伴う)便または油の漏れ
実害の中で1番ヤバそうなのがこれでした。日中など活動中に何気なくお尻から油が流れ出てきたり、放屁した際に油まみれの水様便が飛び出てくることがあります。しかも相当な臭いつきでも・・・。もちろん個人差はあるでしょうが、こんなことがしょっちゅうあるようで学業や仕事にかなり支障をきたすでしょう。また寝ている間も出てくるようで、高価なベッドを捨てる羽目になったという意見もありました。また、トイレも油まみれになり掃除がめちゃくちゃ大変になることもあるようです。
【対策】上記の症状は、特に服用早期に発現することが多く、次第に収まってくる傾向にあるようです。よって特に飲み始めは、脂っこい食事を控えると良いでしょう。また外出時で万が一出た時用に、オムツや便漏れパッドも必要かもしれません。

脂溶性の栄養素の流出
油を排出するということは、油に溶けやすいものも流れ出てしまうということです。具体的にいうと、脂溶性ビタミン(※2)の、ビタミンAやD、EおよびKなどです。特にビタミンE(βカロテンなど)が不足しがちになります。
【対策】脂溶性ビタミンの入ったマルチビタミン剤を補給することです。ただし、「アライ」継続中に同時に摂ると、結局また吸収が阻害されがちです。よって「アライ」とは2〜3時間ずらして摂るべきでしょう。

⑶生活習慣の改善の取り組みと確認
これは購入のたびに、わざわざ確認が入るのかはまだ不明ですが、相当煩わしさを感じる人も少なくないかと思います。もちろん生活習慣の改善自体は、とても重要であることはもちろんのことですが。

※2: ビタミンについてやその欠乏症など詳細は、以下の過去記事を参考にしてみてください。

spect1975.hatenablog.com

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6. 「アライ」と一緒に飲んではいけない薬はあるの?

シクロスポリン製剤(免疫抑制剤)、抗HIV剤(エイズ治療薬)、ワーファリン等の抗凝固薬が影響を多く受けるため、服用している方は「アライ」は併用できません(ワーファリンがいけない理由はビタミンK関連に対し、作用を増強することによる出血傾向のためだと思われるのですが、他に関係のある抗凝固剤があるのでしょうか?)。薬の効果が弱まったり強まったりして、体に著しい影響が出てしまう恐れがあるためです。

また、アミオダロン製剤(抗不整脈薬)、レボチロキシン甲状腺ホルモン剤)、抗てんかん薬、抗うつ薬ベンゾジアゼピン系薬、経口避妊薬も影響を受ける可能性があるため注意が必要のようです。

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7. 「アライ」についてのまとめ!

  • 内臓脂肪減少薬として、日本で初めて市販された薬である。
  • その作用は食事由来の脂分の吸収を1/4カットするものである。
  • 脂肪減少には基本は生活習慣の改善であり、「アライ」は補助としてのものでやせ薬ではない。
  • 要指導医薬品であり、購入は実店舗の薬局や薬店から、薬剤師の説明を受ける必要がある。ネットからの購入は不可。
  • 有効性は生活習慣改善と併用することで、1年間継続にて内臓脂肪面積が約21.5%減少する。
  • 弊害としては日常生活における実害が主であり、不定的にお尻から油を伴った便などが出て、臭いも伴うこともある。

最後に、個人的な意見としては、これを見て使おうと思う人はかなり少ないのではないのかな?という印象です。生活習慣の取り組みと記録は何とかなるでしょうが、油や便を伴う放屁が如何ともし難いですね。ただし、食事の摂り方でいくらか対応できたり、続ければ治まってはくるらしいので、もう少し多くの方の感想を待ちたいです。私も中年太りというか、元来脂肪がすぐついてしまうタイプであるため、ちょっとだけ使ってみようかなとは思っています。また今度使ってみた感想もブログに書いていくつもりです。みなさんは使ってみたいと思いますか?

つらい肩こりもこれでサヨウナラ!これで肩こり対策120%

No.9 長く苦しい肩こり、何とかしたい!!!

目次

  1. 肩こりってそもそもどうして起こるの?
  2. 肩こりは他へも悪影響をおよぼすって聞くけど?
  3. 肩こりはどうやったら予防したり改善できるの?
  4. 肩こりに効く薬ってあるの?
  5. 肩こりグッズで効果的なものはあるの?
  6. 肩こりについてのまとめ!

 

1. 肩こりってそもそもどうして起こるの?

肩こりが起こる大きな要因としては、肩に両腕や重い頭などのすべての重さが集中しているためと言われています。女性の主訴の第1位が肩こりといわれているほど、特に女性にとっては大きな問題です。また、ただ肩が凝るという症状のみでなく、筋肉や神経、骨などの疾患による肩こりもあり、こちらはとても注意が必要になります。

⑴原因が明らかではないケース(日常生活での姿勢や状態によるもの)

椎間板ヘルニアなどの原因が明らかな場合もありますが、大半の場合は原因疾患が分からないことになります。同じ姿勢が続いたり体重がかかることで、首から肩にかけて継続的に緊張により、筋肉の硬直による血行不良が起き、局所の循環障害が出やすくなります。その結果、酸素や栄養素が届かなかったり老廃物が溜まり、痛みを引き起こすというのが一般論です。現代の社会ではデスクワークや授業など、同じ姿勢をとる時間がとても長いため、発症しやすくなります。このケースは原因自体を治すことが難しく、対症療法にとどまり慢性化しやすくなります。

⑵首や肩付近の筋肉などに原因がある場合

a. 椎間板ヘルニア:首からお尻まで繋がっている骨は1本でなく、椎骨と呼ばれるブロックがいくつも繋がっています。その椎骨間にあるクッションの役割を果たす軟骨は、クッションに役割を果たす椎間板と呼ばれ、その中身が飛び出し神経が圧迫されて痛みや凝り、痺れなどが起こります。比較的若い人に多い病気です。

b. 頚椎症:首の骨や椎間板が長い年月をかけて変形していき、神経を圧迫するものです。よってヘルニアとは異なり、中〜高齢者に起きやすい病気です。

c. 肩関節周囲炎(四十肩、五十肩):年齢を取ると筋肉や関節の骨などが少しずつ変化していき、それが重なって慢性的な炎症が起こることで痛みや可動域も狭くなります。一般的には四十・五十肩などと言われ中高年以降に起こります。

⑶首や肩以外の原因の場合

高血圧・低血圧、狭心症心筋梗塞などの心疾患、眼精疲労などの眼疾患、その他顎の関節症や耳鼻科疾患などもあります。何の関係もなさそうな疾患も関連がある場合があるため、ひどい肩こりに悩まされて上記の合併症がある場合は、一度専門医師に診てもらい、原疾患を治すことで劇的な改善が起こることもあります。

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2. 肩こりって他へも悪影響をおよぼすって聞くんだけど?

肩こりは長期間続くことで患部のみだけではなく、体のさまざまな部位に不調をもたらすことがあります。

⑴頭痛

肩こりが長く放置されると、首や肩周りの筋肉が緊張し、「緊張型頭痛」を引き起こすことがあります。この頭痛は、片頭痛のような激しい痛みではなく、後頭部をはじめとして全体が締め付けられる感覚が特徴です。

⑵手のしびれ

肩こりの状態では、首や肩の筋肉が硬直し、それらの奥にある血管や神経を圧迫され続けています。このため、手のしびれが起こってしまうのです。特に、日常生活での運動不足や長時間のデスクワークが関係しています。

⑶不眠

肩こりは睡眠にも影響を与えることがあります。肩こりによる筋肉の緊張は、自律神経にも影響を与え、交感神経が優位になります。そのため、リラックス状態に入る副交感神経が働きにくく、寝つきが悪くなることがあります。

⑷めまいや吐き気

首肩周りの筋肉の硬直により、栄養や血流が十分に行き渡らないことがあり、めまいや吐き気などの症状が現れることがあります。これらの症状が原因不明の場合は、肩こりが関係している可能性があります。

抑うつ(頸性うつ)、不定愁訴

肩こりや首こりが主原因で、副交感神経に異常をきたすことで「新型うつ」と呼ばれる状態が生じることがあります。この新型うつは、通常の抑うつとは異なり、頚筋症候群の一種とされています。特に最近新型うつが増えているのは、スマホやパソコンの長時間使用が原因とされています。

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3. 肩こりはどうやったら予防したり改善したりできるの?

肩こりは予防できることも、改善する方法もあります。肩こりがある人もない人も、悪化を防ぐために予防が重要です。原因である筋肉の緊張や硬直を防ぐことが鍵です。

  1. 良い姿勢の保持:デスクワークや長時間の座位での作業をする場合は、正しい座り方やパソコンのモニターの高さを調整することが重要です。最初は違和感があったりするかもしれませんが、しばらく続ければ慣れて当たり前になります。
  2. 同じ姿勢を取り続けない:仕事や勉強する上では敷かないと思われるので、何十分かごとにストレッチを挟むなど良いです。
  3. 入浴を行い、体をリラックスさせる:シャワーだけでは、血行改善には不十分です。ぬるま湯にゆっくりつかることで、リラックス効果が高まり、副交感神経が優位になります。
  4. 軽い運動やスポーツを習慣づける:運動不足は筋肉の硬直を招きやすくなります。首や肩周りの筋肉を鍛えるために、軽い運動やスポーツを取り入れることが有効です。
  5. マッサージや整体:定期的なマッサージや整体の受けることで、筋肉の緊張を緩和し、血流を促進することができ、肩こりの症状を軽減することができます。
  6. 適切な枕や寝具の使用: 硬すぎたり柔らかすぎる寝具はかなりの悪影響です。適切な枕やマットレスを選ぶことで、首や肩の負担を軽減することができます。

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4. 肩こりに効く薬ってあるの?

肩こりの痛みを軽減するために、いくつかの薬が利用されます。以下に代表的な薬剤を紹介しますが、これらはあくまで対症療法であり、原因疾患の治療ではありません。特に原疾患がある方は、必ずまずそちらを治すために医院にかかりましょう。

ただし痛みがある場合は、適正な薬を用い速やかに抑えることも重要です。痛み止めは悪いものだと思い避けていると、慢性疼痛の原因になってしまいます。痛みを放置し続けていると、原疾患に関係なく痛みの慢性化を起こしてしまうのです。

①非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)

ロキソニンボルタレンなどが代表例です。こった部分の痛みが炎症がひどい時は、これらの薬がかなり効果的です。内服剤や外用剤など多種多様のものがあるため、ゲル剤やローション剤やスプレー、パップ剤やテープ剤などを使い分けていきましょう。

(ⅰ) 内服剤

一言内服剤といっても、強さや効果時間が異なりさまざまな種類があります。個人の体質や生活環境、症状の度合いに応じて適正なものを選択する必要があります。以下各痛み止めを特徴別にまとめたので、参考にしてください。

a. 長時間作用型:モービック(メロキシカム)、レリフェン(ナブメトン)など
継続的に痛みがある方に推奨されます。体に溜まりやすいため、副作用が出やすい高齢者などには不向きです。

b. COX-2選択的阻害型:セレコックス(セレコキシブ)など
胃障害の副作用をかなり軽減できますが、心血管障害がある方は不向きです。

c. プロドラッグ型:ロキソニン(ロキソプロフェン)、クリノリル(スリンダク)
そのものには効果は少なく、体内に吸収され初めて効果を表すよう設計され、胃や腎機能への負担も少なく済みます。長期服用向きです。

d. 強力作用型:ボルタレン(ジクロフェナク)
痛みや炎症を抑える作用は強いですが、副作用もその分出やすいので注意です。

 

(ⅱ) 外用剤

a. 坐薬:ボルタレン(ジクロフェナク)、フェルデン(ピロキシカム
肛門に挿入後すぐに直腸で吸収されるため、即効性が非常に高いです。基本的には痛みをすぐに抑えたい時など頓用として用います。

b. 貼付剤:モーラス(ケトプロフェン)、ロキソニン(ロキソプロフェン)
主にテープ剤とパップ剤があり、はがれにくさ重視のテープ剤、かぶれにくさ重視のパップ剤と使い分けます

※モーラス製剤は光線過敏症が

c. 塗布剤:ボルタレン(ジクロフェナク)、イドメシン(インドメタシン)など

クリーム剤、ローション剤、スプレー、ゲル剤などがあります。効果はそれほど違いがないため、使用して効果を実感するものを選びましょう。貼付剤とは異なり、かぶれに長時間効果が持続しないことが難点ですが、かぶれにくいという特長があります。

アセトアミノフェンカロナールなど)

こちらはNSAIDsよりも効果が緩やかで、痛みを取る作用はありますが炎症を抑える効果はありません。腎機能にはほとんど影響しないため、高齢者などにも使いやすく量の調節もしやすいです。

③筋弛緩剤:ミオナール(エペリゾン)、テルネリン(チザニジン)

筋肉の緊張を緩和してこりをほぐす効果があります。通常NSAIDsと併用され、注意点は中枢に作用するため、眠気脱力感が出現することもあります。

漢方薬

腎機能障害があったり、上記の薬が適さない場合、さらには体質改善などで改善させることができます。

a.首筋の凝りが主な場合

  • 葛根湯:頭痛を伴い頑固な肩こりがある方
  • 桂枝加葛根湯:葛根湯で胃腸障害が出やすい方

b. 肩付近の凝りが主な場合

  • 柴胡桂枝湯:万人向け
  • 大柴胡湯:体力がありがっちりタイプな方
  • 芍薬甘草湯:痛みも強く伴う方

c. 胃腸虚弱由来な場合(胃腸が弱っていると筋肉をうまく作れず肩こりにつながります)

d. 凝りよりも痛みが気にある場合

  • 薏苡仁湯:胃腸が丈夫で、慢性化した炎症や痛みがある方
  • 五積散:冷えにより痛みが悪化する方
  • 二朮湯:四十、五十肩の方

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5. 肩こりグッズで効果的なものははあるの?

肩こりに効果的なグッズは多岐にわたりますが、その中でも特におすすめのアイテムをご紹介します。これらのグッズは自宅で手軽に使用でき、毎日のケアに役立ちます。

  • 振動マッサージャー
    【MYTREX REBIVE MINI XS(マイトレックス)】
    価格は1万円以上とやや高価ですが、肩だけでなく様々な部位に使用可能です。パワフルな振動でこりをほぐし、充電の持続時間も長く、持ち運びにも便利です。
  • ネックマッサージャー
    【ネックマッサージャー(惣田製作所)】
    太めの帯状で、持ち運び可能ですが、重量はやや重いとのことです。寝たままでも使用可能で、内蔵のヒーターで温めながらマッサージができます。
  • 温熱パッド
    【あずきの力(桐原化学)】
    肩から首にかけて包み込むことができ、レンジで簡単に温める繰り返し使用することができます。血行を促進し、こりを和らげます。
    【めぐリズム 首もとあったかシート(花王)】横長のシートの使い捨てタイプ。ラベンダーの香りでリラックス効果も誘います。
  • 矯正寝具
    テンピュール オリジナルピロー】
    価格は1万5千円以上とやや高価ですが、低反発素材で圧力を分散し、快適な睡眠を提供します。肩こりの改善に効果的です。
  • アロマセラピー
    【ラベンダーフレンチ(ASH)】
    ラベンダーには、心を落ち着かせ安眠を促す効果があります。この商品はコストパフォーマンスが非常に高いですが、一部の方にはやや控えめに感じられる可能性があります。
    【ペパーミント エッセンシャルオイルインセント)】
    ペパーミントは、ストレスの緩和と心を落ち着かせる作用があり、副交感神経を活性化させます。天然の植物から抽出されたこの高品質のオイルは、その清涼感で知られ、頭をすっきりとさせる効果も期待できます。

※磁気グッズについては、エビデンスがはっきりしないためにここでは触れません。

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6. 肩こりについてのまとめ!

  • 肩こりの原因はヘルニアなど原疾患があるものとないものがあり、ないものの方がはるかに多い。
  • 原疾患がある場合は、早くその専門医にかかり改善すべきである。
  • 肩こりは頭痛や不眠などを伴い、多くの方面にも悪影響が出やすい。
  • 肩こりは運動や姿勢の改善、マッサージなどである程度の予防や改善はできる。
  • 痛みがある場合は慢性疼痛につながらないように、早々に対応すべきである。ただし、安易なNSAIDsなど痛み止めの長期服用は悪影響。
  • 肩こりグッズも数多くあり、自分に合ったものを選べば効果も相当期待できる。

いかがだったでしょうか?肩こりは特に華奢な日本人はなりやすく、もはや国民病とも言われているものです。さらに前述通り他方面へも悪影響が出やすいものを、そのまま放置しているなんて方は少なくないのでしょうか?さあ、今すぐこの記事をしっかり読み直して改善すれば、体の他の部位にもいろいろ好影響があるかも・・・

ビタミン剤をホントウに分かって摂ってる?これでビタミン理解度120%!

No8. ビタミン剤

現代の日本では食の欧米化が進み、栄養不足や偏りが増え、それに伴い様々な疾病や体調不良が引き起こされる可能性が高まっています。それを補う上で、サプリメントであるビタミン剤は必須な存在ともなっています。ただ、高価なビタミン剤を購入しても、果たしてそれを十二分に活かせているでしょうか?この記事を読めば各ビタミンのことを詳しく把握でき、どうしたら最大限に活かせる一緒に考えていきましょう。

 

目次

1. そもそもビタミンって何?

2. ビタミンにはどんな種類があるの?

 ⑴ 脂溶性ビタミン

  a. ビタミンA

  b. ビタミンD

  c. ビタミンE

  d. ビタミンK

 ⑵ 水溶性ビタミン

  a. ビタミンB1

  b. ビタミンB2

  c. ビタミンB3(ナイアシン)

  d. ビタミンB5(パントテン酸)

  e. ビタミンB6

  f. ビタミンB7(ビオチン、ビタミンH)

  g. ビタミンB9(葉酸)

  h. ビタミンB12

  i. ビタミンC

3. ビタミン剤って合成のものと天然のものとどちらが良いの?

4. ビタミンって必要摂取量を摂れば十分なの?

5. ビタミンは不足するものだけ取れば効くの?

6. ビタミンについてのまとめ!

 

1. そもそもビタミンって何?

ビタミンという言葉は、日常生活でよく耳にするものの、その正確な意味についてはあまり知られていないかもしれません。

ビタミンは、私たちの体にとって重要な栄養素であり、主に糖質、脂質、タンパク質といった三大栄養素代謝を助ける役割を持ちます。言い換えれば、ビタミンは私たちの体におけるエンジンのオイルのようなものです。車がエンジンオイルなしでは正しく機能しないように、私たちの体もビタミンなしでは適切に機能せず、エネルギーの不足や健康上の問題を引き起こす可能性があります。そのため、ビタミンは体にとって極めて重要な栄養素です。

本来、ビタミンは食事から摂取することが理想的です。しかし、忙しい現代社会ではバランスの取れた食事を毎日摂取することが難しいこともあります。重要なことは各ビタミンの適性をしっかりと理解して、自分に何が不足しているのか?を正しく理解した上で摂取していくことが重要です。

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2. ビタミンにはどんな種類があるの?

ビタミン剤を摂取する際には、各ビタミンがどのような効果を持っているかを理解することが非常に重要です。そして、自分にとって何が不足しているかを把握し、最も適したビタミン剤を選択する必要があります。

ビタミン剤は大きく2種類に分かれており、油に溶ける脂溶性ビタミンと、水に溶ける水溶性ビタミンがあります。これを知っておくだけでも、どのようにして効率よく摂取できるかを理解できます。例えば、脂溶性ビタミンを油と一緒に摂取すると、吸収されやすくなることを知ることができます。

脂溶性ビタミン

脂溶性にはA、D、E、Kの主に4種類があります。脂溶性ビタミンの注意すべき点は、必要以上に摂りすぎると、肝臓や脂肪などに蓄積して過剰症を起こす可能性が出てきます。よってビタミン剤として摂取する場合は特に、上限量を守る必要があります。

a.ビタミンA(レチノール)

ビタミンAには主に2種類存在し、肉や魚、乳製品などに含まれる既成ビタミンAと、果物や野菜などの植物由来のもので、体内で分解や変換されて初めてビタミンとして働くプロビタミンAがあり、代表的なものではβカロテンが存在します。プロビタミンAは、体がビタミンAを不足している量だけを変換し、不必要な場合は脂肪細胞に蓄えられるか排泄されるため、過剰症を起こすことはありません。

【働き】主成分のレチノールは、目や皮膚の粘膜を保護し、免疫力を高める作用があります。特に暗い場所での視力を保つ作用もあります。皮膚に対しては、誘導体であるトレチノインがターンオーバーを早め、しわや色素沈着に効くとされています。

【必要摂取量】成人男性:550〜650μg、成人女性:450〜500μg

【欠乏症】ビタミンA欠乏症の初期段階では、夜間の視力低下である夜盲症が起こります。さらに進行すると、角膜乾燥などが現れ、放置すると失明に至る可能性があります。また、IgGなどが減少し、免疫機能の低下も招きます。

【過剰症】急性のものでは頭痛が特徴的な症状であり、慢性では皮膚の乾燥を含めた皮膚トラブル、脱毛、筋肉痛などが起きます。また、妊娠初期での過剰摂取は、胎児の催奇形性につながる恐れもあるため、上限量も5000IU(1500μg)に設定され、特に注意が必要であると言われています。

【多く摂れる食品】

  • 牛や豚などの動物のレバー(肝臓)
  • うなぎや鮭などの魚類
  • ニンジン、ほうれん草などの緑黄色野菜
  • アボガド、バナナ、メロンなど

【相性の良いもの】

  • 亜鉛:ビタミンAの抗酸化作用をさらに活性化し、老化を招く活性酸素や過酸化脂質を抑えます。これにより、アンチエイジングの効果の期待もできます。
  • ビタミンE:ビタミンAの効果を高めるため、目の働きをよりサポートします。

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b. ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)

ビタミンDは、主に2種類に分類されます。一つは植物由来のもので、キノコなどに含まれるエルゴカルシフェロールと呼ばれるVD2です。もう一つは、魚などの動物性由来であり、コレカルシフェロールと呼ばれるVD3があります。皮膚を太陽の光に当てることで、ビタミンDが生成されると言われていますが、これは主にD3に関連しています。

【働き】一番大きなものとしては、カルシウムの吸収を助け骨の健康を保つことです。他にも、神経伝達や筋肉収縮も助けます。さらには、体内に侵入した細菌やウイルスに対しても、免疫機能を促進したり、最近ではうつ病にも効果があると言われています。

【必要摂取量】成人:600IU/日(71歳以上は800IU)

【欠乏症】ビタミンD欠乏症は、小児期には骨が軟化し変形するくる病として現れ、成人期には骨軟化症として現れ、骨の痛みや筋力の低下を引き起こします。

【過剰症】初期症状としては、吐き気や食欲不振、便秘などの消化器症状が主なものです。さらに悪化すると、不整脈やけいれん、腎障害を起こすこともあります。

【多く摂れる食品】

  • 鮭やイワシ、サンマなどの魚類
  • しいたけ、きくらげなどのキノコ類(日光にある程度晒すとさらにアップ)

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c. ビタミンE(α-トコフェロール)

ビタミンEは、トコフェロールなどの8種類の化合物の総称であり、多くの食品に含まれる栄養素です。その中でも、ヒトの体内で活性が高く主に利用されるのはα-トコフェロールであるため、ビタミンEの量はこの名称で表示されることがあります。

【働き】ビタミンEには抗酸化作用があり、脂質の酸化を抑えて動脈硬化老化を防ぐ効果があります。また、赤血球の破壊を防ぎ、血管を拡張して手足の冷えを改善する役割もあります。さらに、過剰な活性酸素を抑制し、免疫細胞を活性化させることによって免疫力を向上させる役割も果たします。

【1日必要摂取量】乳幼児:3.0〜5.0mg、成人:5.0〜7.0mg

【欠乏症】ビタミンE欠乏症では、神経や筋肉に損傷を与え、手足の感覚喪失や視覚障害などが起こる可能性があります。ひどくなると溶血性貧血も発生しますが、日本を始めとした通常の食事が取れる国では滅多に起こりません。

【過剰症】過剰なビタミンE摂取により、α-トコフェロールが骨を壊す破骨細胞の巨大化に関与し、骨粗鬆症が引き起こされる恐れがあります。ただし、ビタミンEは通常摂取した2/3は便として排出されるため、通常の食事からの摂取では過剰症はまず起こりません。過剰なビタミンE摂取は、相当量のビタミン剤を摂取した際に起こり得ることがあります。

【多く摂れる食品】

  • 煎茶(非常に多い)
  • アーモンドやくるみなどの豆類
  • ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
  • ひまわり油やオリーブオイルなどの油類

【併用すると良いもの】

  • ビタミンC:抗酸化作用を持つα-トコフェロールが酸化されて活性を失ったものをビタミンCにより元の還元体へと戻す作用があります。

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d. ビタミンK(K1:フィロキノン、K2:メナキノン類)

ビタミンKは脂溶性のビタミンで、植物性のK1と生体内で動物性食品に多く主に利用されるK2とがあります。熱に強い性質を持つため、料理では油で炒めたりすると吸収効率が上がります。ただし、紫外線には不安定です。また、生体の需要を満たすほどではないですが、腸内細菌でも産生されます。

【働き】

  • 血液凝固の促進:血液凝固に関するプロトロンビンの補酵素となります。
  • 骨形成の促進:カルシウムの吸収や運搬を活性化します。
  • 動脈の石灰化予防:石灰化を促進するコラーゲンの生成を抑制します。

【1日必要摂取量】成人:150μg

【欠乏症】ビタミンK欠乏症では、血液凝固に関与するため、皮膚や鼻、胃などの消化器からの出血が起こります。ただし、通常は腸内細菌によりメナキノンが産生されるため、欠乏症はまず起こりづらいと言えます。ただし、継続的な抗生物質の服用はメナキノンの産生を低下させ、ビタミンKの利用効率を減少させる可能性があります。

【過剰症】ビタミンKの過剰摂取は健康被害が見られないため、上限摂取量は設けられていません。通常の食事からの摂取では問題はありません。

【多く摂れる食品】

  • ブロッコリー、ほうれん草、モロヘイヤなどの緑黄色野菜
  • わかめ、海苔などの海藻類
  • 納豆

【摂取上の注意点】ビタミンKは病院や薬局などで、血液をサラサラにする薬と一緒に摂ってはいけないと言われています。ただし、その中でもワーファリンという薬のみが関連します。ワーファリンはビタミンKが関与する血液凝固を阻害するため、併用すると効果が相殺される可能性があります。他の抗血小板薬や血液凝固阻害剤との併用は問題ありません

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⑵ 水溶性ビタミン

脂溶性と反対に水に溶けやすい性質を持ち、ビタミンB群の8種類とビタミンCの計9種類が存在します。その性質から、過剰に摂ったとしてもその分は尿に溶けて排出されます。逆にいうと、体に溜め込まないため、毎日摂取する必要があります。

a. ビタミンB1チアミン

ビタミンB1は水溶性のビタミンで、チアミンと呼ばれる栄養素であり、日本で初めて発見されたビタミンと言われています。白色の結晶で、弱酸性には安定していますが、アルカリ性熱には分解されやすい性質を持っています。また、B1はアリシンがあると吸収されやすいため、多く含まれる玉ねぎやニンニクと一緒に摂取すると効率的です。

【働き】ビタミンB1は糖質が体内で分解されてエネルギーに変換される際に補酵素としての役割を果たします。特に日頃から活発に動く方や、糖分を多く摂取する方にとっては特に必要な栄養素です。

【1日必要摂取量】成人:1.1〜1.4mg

【欠乏症】ビタミンB1欠乏症では、糖からのエネルギー変換が不十分になるため、疲労倦怠感を感じやすくなります。長期間にわたるエネルギー不足は、脳や神経系に障害を引き起こす可能性があります。さらに、重症化すると心不全による足先の神経障害や脚気と呼ばれる病態が現れることもあります。これは江戸時代にビタミンB1の非常に多い玄米から、食感や味の良い白米に変えたことで非常に多くの方がかかったことでとても有名なものですね。

【多く摂れる食品

  • 豚肉や主に赤身肉、鮭などの魚類
  • 大豆、アーモンドなどの豆類
  • 玄米や発芽米などの穀類

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b. ビタミンB2リボフラビン

ビタミンB2リボフラビンと呼ばれる、水溶性ビタミンの一種です。調理では水にさらし続けると溶け出してしまうために、煮汁などと一緒であると効率的に摂取できます。

【働き】ビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質の代謝やエネルギー産生の補酵素として重要な役割を果たします。特に脂質の代謝に関与し、皮膚、粘膜、爪などの発育を促進します。このため、「発育のビタミン」「美容ビタミン」とも呼ばれます。

【1日必要摂取量】成人:1.2〜1.6mg

【欠乏症】ビタミンB2の欠乏症では、皮膚や粘膜の発育が阻害され、口内炎口角炎、角膜炎などが発生する可能性があります。成長期の子供では成長障害も起こり得ます。

【過剰症】リボフラビンは需要以上の摂取をしても、その吸収率は摂取量が増加するにつれて低下します。そのため、過剰摂取しても吸収されずに尿に排泄されるため、健康障害は報告されていません。

【多く摂取できる食品】

  • 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
  • レバー、ハツなどの内臓類
  • のり、わかめ、ひじきなどの海藻類
  • 納豆、大豆など

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c. ビタミンB3(ナイアシン

ナイアシンは水溶性ビタミンB群の一種で、ニコチン酸とニコチンアミドの総称です。性質としては、中性、酸性、アルカリ性、酸素、光、熱に対して安定しています。そのため、保存や調理によって効力が低下することはほとんどありません

【働き】ナイアシンは全身の500種類もの酵素補酵素として働いています。それにより、糖質、タンパク質、脂質のエネルギー代謝をスムーズにします。また、マクロファージに働きかけ神経保護作用や、脂肪酸ステロイドホルモンの合成も助け、皮膚や粘膜などの健康を維持します。さらには、アルコール分解作用などもあります。

【1日必要摂取量】成人男性:13〜15mgNE、成人女性10〜13mgNE

【欠乏症】ナイアシンの欠乏症は、皮膚や粘膜を正常に維持する働きの不足からくるもので、その主たるものがペラグラと言われるです。それにより、赤い発疹などの皮膚症状、口内炎下痢などの消化器症状、神経障害が出やすくなります。さらに皮膚症状では、光線過敏症が起こることもあります。

【過剰症】ナイアシンは基本的には過剰に摂った分は排泄されるため、問題になることはありません。ただし短期での大量投与により、「ニコチン酸フラッシュ」と呼ばれる症状が出ることがあります。症状としては顔の紅潮やかゆみなどがあげられ、個人差はありますが数時間で治ると言われています。上限量は成人男性が350mgNE、成人女性は250mgNEとされており、マルチビタミン剤の通常量の10倍以上は摂取しないと取れない量になっています。

【多く摂れる食品】

  • カツオやマグロなどの魚類
  • 豚や牛のレバー、鶏の胸肉などの肉類
  • しいたけや舞茸などのキノコ類

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d. ビタミンB5パントテン酸

パントテン酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に属します。かつては酵母の成長に必要な物質として発見され、以前はビタミンB5と呼ばれていましたが、現在ではパントテン酸と呼ばれています。性質としては、水に溶けやすく、酸性やアルカリ性熱に対して不安定です。

【働き】パントテン酸補酵素などの成分として機能し、エネルギー代謝を助けます。特に糖質や脂質の代謝において重要な役割を果たし、善玉コレステロールであるHDLの生成も支援し、動脈硬化を予防します。また、副腎皮質ホルモンの生成にも関与し、ストレス対応の一翼を担うことから、抗ストレスビタミンとも言われています。

【1日必要摂取量】成人:5〜6mg

【欠乏症】パントテン酸の不足により、疲労感や食欲不振といった症状が現れることがあります。また、頭痛や手足の知覚異常、イライラ感、不眠、倦怠感なども報告されています。ただし、腸内細菌でも作られかつ多くの食品に入っていることから、通常の食事では欠乏症はまれです。

【過剰症】パントテン酸の過剰による弊害は、水に溶けやすいという性質から尿に排出されほぼないものとされています。健康被害の報告もなく、上限量も設定されていません。

【多く摂取できる食品】

  • 鶏むね肉、鶏ささみ、鶏や豚および牛レバー
  • うなぎ、ししゃも、タラコなどの魚類や卵
  • えのき、しいたけ、マッシュルームなどのキノコ類
  • 納豆、大豆などの豆類

【摂取上の注意】加工や加熱には弱いので、調理時には工夫が必要です。また、アルコールやカフェインはパントテン酸の吸収を阻害するため、これらを頻繁に摂取する場合は注意が必要にもなります。

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e. ビタミンB6(ビリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)

ビタミンB6には同様の活性を持つ、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの3種類の化合物があります。これらは多くの食品に含まれ、白色の結晶であり、光に分解されやすい性質を持っています。また、ヒトの身体は、代謝に関わる100以上の酵素反応のためにビタミンB6を必要としています。

【働き】ビタミンB6はタンパク質の代謝に関わる補酵素としての役割を担っています。食事で摂ったタンパク質は、アミノ酸に分解され、皮膚や髪の毛、筋肉などの材料として利用されます。また、ビタミンB6は細胞性免疫や体液性免疫の正常な働きの維持、ヘモグロビンなど赤血球合成への関与、脳の働きへの関与、脂質の抗酸化作用などにも関わります。

【1日の必要摂取量】成人男性:1.4mg、成人女性:1.1mg

【欠乏症】ビタミンB6欠乏症では、皮膚や赤血球の生成に関わることから、皮膚炎、舌炎、口内炎、貧血などが起こる可能性があります。さらに、うつ症状や免疫機能の低下なども報告されています。

【過剰症】水溶性ビタミンでは基本的に過剰症がないとされていますが、ビタミンB6の大量摂取時には感覚性ニューロパシーという明確な悪影響があります。これは手足先の感覚が鈍くなることを指します。また症状としては、手足の強い痺れや近く障害もあるようです。ただし、安全上限量は成人で100mgとされており、1日1000mg以上の相当量のビタミン剤での摂取を続けた場合に限ります。

【多く摂取できる食物】

  • カツオなどの赤みの魚、ヒレ肉やささみなどの脂の少ない肉
  • バナナやキウイなどの果物
  • さつまいもや玄米など

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f. ビオチン(ビタミンB7、ビタミンH)

ビオチンは水溶性ビタミンB群の一種で、以前はビタミンB7と呼ばれていましたが、現在では一般的にビオチンと呼ばれています。後に皮膚病を予防するための成分で発見されたことから、ドイツ語で皮膚の「Haut」の頭文字を取ってビタミンHとも呼ばれます。性質としては、水に溶けやすく、熱や光などには安定しています。

【働き】ビオチンは糖、アミノ酸、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜を維持することで、皮膚や髪、爪などの健康を助けます。皮膚に対しては特に、炎症を抑える作用もあるとされています。

【1日必要摂取量】成人:50μg

【欠乏症】ビオチンが欠乏すると、皮膚や髪の維持に関与することから、脂漏性皮膚炎脱毛などが出現します。また、成人では精神症状として、抑うつや無気力も報告されています。さらに、免疫系疾患として、リウマチシェーグレン症候群クローン病などが起こることもあります。

【一緒に摂ると良いもの】

  • 酪酸菌(ミヤBM):ビオチンは腸内で乳酸菌などにより消費されます。よって、酪酸菌により体内への吸収を促進します。
  • ビタミンC:上記の酪酸菌とビオチンを組み合わせ、相乗効果によりニキビやアトピーの治療に用います。

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g. 葉酸(ビタミンB9)

葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、ビタミンB12とともに赤血球の合成を助けます。このことから、「造血ビタミン」とも呼ばれます。植物の葉に多く含まれており、微生物でしか合成されません。光によって分解され酸性下では熱にも不安定です。よって栄養価を保つためには、具材の保管場所や調理過程などに注意が必要です。

【働き】葉酸ビタミンB12と協力して赤血球のヘモグロビン生成を補助します。また、DNAなどの核酸やタンパク質合成を促進することで、細胞の産生や再生を助けます。神経系にも働きかけ、細胞の再生を助けるため、妊婦や胎児にとって特に重要な役割を果たします。さらに、最近では動脈硬化の原因となる物質を他物質に変換することも分かっており、脳や心臓疾患予防にも期待されています。

【1日必要摂取量】成人:240μg、妊娠の疑いまたは妊娠している方はその倍量

【欠乏症】葉酸の欠乏症には、ビタミンB12と同様に巨赤芽球性貧血が起き、動悸や息切れ、疲労感などが出やすくなります。特に妊娠初期の母親が不足すると、その胎児が無脳症や二分脊椎症などの先天性疾患のリスクを高めます。よって上記のように、妊婦の必要量が通常成人の倍量に設定されています。

【過剰症】通常の食事では、過剰な分の葉酸は尿で排泄されるため問題はありません。ただし、サプリメントで過剰に摂取し過ぎると、亜鉛の吸収不足を引き起こしたり、ビタミンB12欠乏の発見を遅らせる可能性があります。妊婦であっても1日1000μgを超えない方が良いとされています。

【多く摂れる食品】

  • 鶏や牛、豚などのレバー
  • のり、ワカメなどの海藻類
  • ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガスなどの緑黄色野菜
  • 大豆、納豆などの豆類
  • マンゴー、イチゴなどの果物

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h. ビタミンB12(シアノコバラミン

ビタミンB12はコバルトを含むビタミンの総称で、赤色を呈し、水溶性ビタミンに属するが、水にやや溶けにくい性質も持ちます。また、腸内細菌でも生成されることが知られています。

【働き】ビタミンB12DNAの生成を助けるほか、ヘモグロビンや新しい赤血球の生成を促進する「造血作用」があります。神経細胞にも関わり、索軸を取り囲む脂肪膜の生成や、神経細胞核酸やリン酸の生成を促進し、末梢神経を修復します。また、脳の発育にも関与します

【1日必要摂取量】成人:2.4μg

【欠乏症】ビタミンB12の欠乏症には、貧血や末梢神経障害があります。貧血は「巨赤芽球貧血」と呼ばれ、動悸や息切れ、疲労感などが症状として現れます。末梢神経障害では、手足先のしびれや痛みが起こります。また、脳にも影響が及び、記憶減退や集中力低下などの症状も見られます。

【過剰症】ビタミンB12の吸収は、内因子によって調整されます。内因子と結びつかないと吸収されないため、食事からの過剰摂取でも一定以上は吸収されません。そのため、通常の食事からの摂取での健康被害は基本的にはありません。

【多く摂れる食品】

  • しじみあさりなどの貝類
  • イワシやアジなどの青魚類、牛や豚レバーなどの肉類
  • チーズやヨーグルトなどの乳製品や卵類
  • 海苔などの海藻類

※野菜・芋類・キノコ類などの植物性に食品には含まれません

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i. ビタミンC(アスコルビン酸

ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、オレンジ果汁の中に壊血病を防ぐ因子として初めて発見されました。水に溶けやすく、熱や光に非常に敏感であり、保存や加工調理などで容易に失われる性質があります。また、ヒトの体内ではビタミンCを作る酵素を持たないため、定期的に摂取しなければなりません。

【働き】

  • コラーゲン産生の促進:コラーゲンは皮膚、骨、血管など多くの組織の構成要素であり、皮膚や血管の健康維持に重要です。
  • 抗酸化作用:ビタミンCは酸化されやすい性質を利用して、体内で細胞の酸化を防ぎ、老化や動脈硬化の予防に役立ちます。
  • 免疫機能の強化:好中球やリンパ球などの免疫細胞を活性化させ、体の免疫力を向上させます。

【1日必要摂取量】成人:100mg

【欠乏症】

  • 壊血病や皮下出血:コラーゲンの欠乏により、血管が脆くなり、壊血病や皮下出血のリスクが高まります
  • 免疫力低下:感染症に対する抵抗力が低下し、かぜなどの病気にかかりやすくなります。
  • 筋力低下:長期間のビタミンC不足により筋繊維が弱くなり、筋力が低下する可能性があります。
  • その他、疲労感やイライラ感などの症状が現れることもあります。

【過剰症】基本的には摂りすぎても尿として排出されるため、問題はありません。ただし、大量摂取すると胃の不快感や下痢が起こる場合があります。

【併用すると良いもの】

  • 鉄分:コラーゲン合成に必要なアミノ酸の生成には、ビタミンCとともに鉄分も必要です。これにより、コラーゲン合成が促進されます。
  • ビタミンP(フラボノイド):ビタミンCの効果を持続させるのに役立ちます。天然の食品では、これらの成分が一緒に存在しています。

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3. ビタミン剤って合成のものと天然のものとどちらが良いの?

各ビタミンの特性についての理解が進みました。次に、自身の体調や栄養状態に応じて、どのビタミンが不足しているかを把握し、それに合ったビタミン剤を選択する必要があります。

ビタミン剤を選ぶ際に、多くの人が天然由来のもののほうが効果的だろうと考えるかもしれません。しかし、実際には一部のビタミンを除いて、その違いはさほど大きくありません。化学式としてはどちらも同じあり、天然由来のビタミンは体内でより容易に吸収される形で存在していますが、それほど劇的な違いはないのです。以下に、天然と合成のビタミンで留意すべき点や、誤解されがちな情報があるビタミンをいくつか紹介します。

⑴ビタミンE

主成分のα-トコフェロールは、天然のものが効果が高い「d体」で存在します。一方、合成のビタミンEは「dl体」であり、効果がやや低いとされています。そのため、天然由来のビタミンEがより効果的であると言えます。ビタミン剤の成分表で「d-α-トコフェロール」と表示されているものが天然由来であり、「dl-α-トコフェロール」と表示されているものが合成ものです。

葉酸(ビタミンB9)

葉酸に関しては、合成されたもののほうが吸収率が2倍ほど高いとされています。天然の葉酸は、レバーや野菜、果物などから摂取されますが、吸収効率が低い傾向があります。そのため、葉酸を効率よく摂取するには、合成されたビタミン剤が適しています。ただし、妊娠後期に合成葉酸を摂りすぎると胎児の喘息リスクが増加する可能性があったり、合成葉酸を吸収するための酵素が日本人は少ない報告もあるため、バランスのとれた食事が重要です。

⑶ビタミンC

SNSやインターネット上では、合成ビタミンCが発がん性を持つという意見が存在します。しかし、これは完全な誤解です。厚生労働省も合成ビタミンC自体に発がん性はないと発表しています。ただし、一部の飲料に保存料としてビタミンCが使用されている場合、同時に使用される安息香酸ナトリウムと相互作用して発がん性のあるベンゼンが生成される可能性があります。しかし、公的試験によると、保存料として両者が含まれる製品でも発がんリスクは非常に低いことが示されています。よって、通常の飲料製品では問題はほとんどありません。どうしても気になる方は、保存料に安息香酸ナトリウムが入っていないものを選ぶとより安全ですね。

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4. ビタミンは必要摂取量だけ摂れば十分なの?

前述で1日必要摂取量を記載しましたが、あくまでこれは欠乏症を出現させず、各ビタミンの通常の働きを十分出すためのものです。さらに、ある目的や治療として摂取するなら話すは別で、一部では必要摂取量の何倍も摂る必要があります。以下はその目的や疾患ごとに必要量を記していきます。

掌蹠膿疱症:ビオチンとして4.5〜6g

掌蹠膿疱症は治療法の少ない疾患の一つであり、その中でもビオチンの大量摂取による治療法が確立されております。ただし、現状では保険適応は通っておらず、皮膚科などでは1g/日しか処方されないために、その治療に対しては完全に不足します。よって自費で保険外適応を受けるか、サプリで補う必要があります。また乳酸菌以外の酪酸菌などの整腸剤やビタミンCと併用するとより効果的です。

⑵ 末梢循環障害:ビタミンEとして150〜300mg

手足の冷えやしもやけなどの症状がある場合、通常の食事から必要な量を摂取するのは難しいです。それ故に処方薬やサプリメントを利用しましょう。

⑶ 末梢神経障害:ビタミンB12として750〜1500μg

手足の感覚鈍化やしびれなどの症状がある場合、大量のビタミンB12が必要となります。こちらも通常の食事からの摂取では困難なため、医師に相談して薬や適切なサプリメントを利用しましょう。

統合失調症抑うつナイアシンとして最大3000mg

体内の大きなエネルギー源の役割を果たすATPは、脳内でもとても多く消費されます。よって、ATP産生に関与するナイアシンの大量投与で一部の神経障害が改善した報告もあります。こちらは保険外となり、専門医と相談して摂取していくと良いです。

⑸ ニキビ、美肌(しわ、たるみなど):ビタミンCとして1000mg

美肌やニキビの改善には、通常の必要摂取量では不十分です。バランスの取れた食事とともに、ビタミンCのサプリメントを摂取することで効果を期待できます。

特に美肌には、色素であるメラニンの生成を抑えてくれるトラネキサム酸と併用するとより効果的です。

ニキビの場合は皮膚のターンオーバーを活性化させたり、過剰な脂質を抑える効果のあるビタミンB2とB6を一緒に摂るとより効果的になります。

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5. ビタミンは不足しているものだけ摂れば良い?

ビタミンを効果的に摂取するためには、単に不足しているビタミンだけを補給するだけではなく、栄養素のバランスを考える必要があります。ビタミンは体内で相互作用し合い、効果を発揮するためには他の栄養素との組み合わせが重要です。例えば、葉酸の吸収にはナイアシンビタミンB12が必要であり、ビタミンB6の働きにはビタミンB2が必要です。特にビタミンB群では、互いに補い合う関係にあります。また、ビタミンCはビタミンEの抗酸化作用を助けるなど、相乗効果が期待されることもあります。そのため、バランスの良い食事から多様な栄養素を摂取することが基本です。必要な栄養素が不足している場合には、マルチビタミンを摂取し、さらに必要な場合には特定のビタミンに特化したサプリメントを補給することが適切です。

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6. ビタミンについてのまとめ!

  • ビタミンは基本は食生活で摂るべきであり、サプリはあくまで補助剤である
  • ビタミンには脂溶性と水溶性と大きく2種に分類される
  • 脂溶性は油などの脂質と一緒に摂ると吸収が上がり、水溶性は尿で排出されやすいため過剰症はないが定期的に摂取する必要がある
  • 各ビタミンには1日必要とされる摂取量が設定され、満たさない状態が続くと欠乏症が出やすくなる
  • ビタミン剤において天然と合成ものは、一部を除きそれほど効果に大差はない
  • ビタミンは互いの生成や働きを補い合っていることが多いため、それ単体よりマルチビタミンで摂った方が効果は高い
  • 一部疾患や美容などを目的とする場合、必要量よりかなり多い量が不可欠となる

ずいぶん長くなってしまいましたが、自分が不足している、知らない部分だけでも読んでいただけると幸いです。これを読んで更なる健康な体を手に入れましょう。また、こういうものを取り扱ってほしい!などがあればコメントでよろしくお願いします。

ステロイドが入った塗り薬は怖い?ステロイド外用薬の真実

No.7 ステロイドって聞くと何となく怖いイメージ。本当のところ副作用とか色々知りたい!

結論:ステロイド外用薬は、正しい使用法に従えば非常に効果が高く、有害性も少ない薬です。アトピー性皮膚炎の治療においては、主要な選択肢の一つです。

目次

  1. そもそもステロイドって何なの?
  2. ステロイド剤はなぜここまで怖がられるようになったの?
  3. ステロイド剤を怖いと思う理由は何だろう?
  4. これだけ強い作用があると、やっぱり副作用も多くあるんじゃないの?
  5. アトピー性皮膚炎にはステロイドは絶対に必要なの?
  6. ステロイド外用薬って強い弱いがあるの?
  7. ステロイドはどの部位にどの強さの薬を塗ればいいの?
  8. ステロイド剤のやめ時がよくわからないんだけど?
  9. ステロイドを使用しない方がいい場合ってあるの?
  10. ステロイド外用薬についてのまとめ!

以下、薬の名前を表示する場合、医療用医薬品の先発品名(一般名)として記します。

ジェネリック品の場合は、一般名の後に「メーカー名」がつきます。沢井製薬の場合は「サワイ」、ニプロならば「ニプロ」や「NP」となります。

1. そもそもステロイドって何なの?

ステロイドは実は体内の副腎皮質という部位で作られるホルモンの一種なのです。これらは体内の炎症を抑えたり、免疫を抑制したりする作用があり、これを薬として応用しています。つまり、ステロイド剤は身体の自然な機能を模倣したものであり、炎症や免疫反応をコントロールするために使われます。

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2. ステロイド剤はなぜここまで怖がられるようになったの?

医薬品としてあるものが、医師の指示のもとに正しく処方されるものであれば、その使用を拒否するなんて基本はありません。薬嫌いの方が、余分な血圧などの薬は飲みたくない、というのはありました。ただし、長く薬剤師を続けてきた中で、この薬だけは絶対嫌だ、と患者さんが言ってくる薬はステロイド剤以外に記憶にありません。なぜこのような背景が生まれてしまったのでしょうか?

いろいろ調べてみたところ、1990年に前半にステロイド外用薬の副作用についてのテレビ報道番組が放映されたのが主な原因の一つのようです。テレビの影響力は凄まじく、この中でステロイド剤の治療は最終手段であり、できる限り使用は避けてとの意見が瞬く間に広まりました。そこからそれではいけないと、日本皮膚科学会ステロイド剤の有用性を訴えることとなり、その話題が鎮火するようになったとのことです。

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3. ステロイド剤を怖いと思う理由は何だろう?

私はそのような患者さんに、ステロイド剤の安全性を説明して使ってもらうようにしましたが、その理由について問うたことはありませんでした。

ネット上の意見など含めて、まとめてみると以下のようなことが言われているようです。

  • みんなが怖いと言っているから
  • 一度使うとやめられなくなったり、リバウンドを起こすから
  • 長く使うと効かなくなり、もっと怖い飲み薬に頼らないといけなくなるから
  • 皮膚が黒くなったり、皮膚が薄くなったりして他の弊害も起こすから

このような意見が主流なようです。結論から言うと、一部正しいものがありますが、ほとんどが誤った認識からくる意見です。特に肌を気にする女性にとって、皮膚が黒くなったりしたらたまったものではありません。このような認識があれば使いたくなるのも理解できます。よって、ここからはステロイド剤の正しい知識を学んでいきましょう。

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4. これだけ強い作用があると、やっぱり副作用も多くあるんじゃないの?

副作用に関しては、内服薬外用薬全く異なります。
内服薬では、高血圧糖尿病骨粗鬆症などの内分泌系・代謝系、消化性潰瘍などの消化器系、感染症などの免疫系、緑内障などの眼科系、その他ムーンフェイスなどのさまざまな副作用があります。これだけ聞くと確かに怖いという印象を抱くのは、仕方ないかもしれませんね。

次は本題の外用薬の副作用についてです。

  1. 皮膚感染症:細菌、真菌、ウイルスへの皮膚感染
  2. ステロイド痤瘡:ニキビ
  3. ステロイド紅潮:顔面酒皶
  4. 眼科系:白内障緑内障
  5. その他:皮膚萎縮、多毛

いずれも局所的なもので、全身性のものはありません。強いて言えば、4が怖いとも言えますが、目の中にさえ入らなければ良いので、内服の時とは異なり目の周囲の塗布さえ注意すれば良いわけです。

それでは、よくある誤解されている外用薬の副作用について挙げていきます

⑴皮膚の色素異常黒色化
これが一番気にする方が多いもののようですが、この症状はステロイド剤によって起きるものではありません。ほとんどが皮膚に炎症が起きた後に、改善した後に残る痕になります。皮膚炎を治す際に、ステロイド外用薬を使うことが多いために誤解されやすかったのだと思われます。
結局、皮膚炎が自然治癒しようが、他の薬で治そうが同等の確率でなります。逆に、皮膚炎が悪化した状態から改善した方が、痕がひどくなることもあります。よってステロイド外用薬で悪化する前に、早めに治した方が最終的に色素以上を防げると言っても良いのです。

⑵ 骨が脆くなったり、顔が丸くなったり(ムーンフェイス)する
これは前述した通り、ステロイド内服薬での副作用です。外用薬は毎日全身に大量投与など、よほど誤った用法をしない限り、体内に吸収され内服薬と同様の副作用が出ることはありません。
ステロイド外用薬では、ほとんどの副作用は全身ではなく一部のものであり、しかも時間をかければ元に戻るものばかりです。

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5. アトピー性皮膚炎にはステロイドは絶対に必要なの?

まず、アトピー性皮膚炎の治療において、どのような目標を持つべきか考えてみましょう。究極の目標としては、根治を達成することだと思われます。しかし、現在の医療技術では根本的な治療が難しく、対症療法が主流です。最適な目標は、「継続的にかゆみなどの自覚症状がないか、軽微な状態であり、日常生活にほぼ影響を及ぼさず、薬の治療も最低限に抑えられること」でしょう。

この目標に向かう方法の一つが、ステロイド外用薬の適切な使用です。厳密に言えば、凄まじいほどの生活習慣の改善をすれば治ることもあるようです。ただし、体に悪い食物を一切取らず、ストレスを溜めず、早寝早起きを徹底して・・・という生活が長期継続してできるでしょうか?一部の方を除けば、大方すぐに根を上げてしまうでしょう。特に中程度以上のアトピーの方は、ステロイド治療が最も現実かつ理想だと思います。

それでは、正しい使用法について学んでみましょう。

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6. ステロイド外用薬って強い弱いがあるの?

一言にステロイド外用薬と言っても、その強さのランクは以下の5つに分かれています。ドラッグストアなどで手に入る市販薬は、Ⅲ群以下のみの強さのものになります。

Ⅰ群:最も強い・ストロンゲスト
【代表薬】デルモベート(クロベタゾール)、ダイアコート(ジフロラゾン)
【注意点】Ⅱ群を使用しても十分な効果が得られない時、その部位に限定的

Ⅱ群:非常に強い・ベリーストロング
【代表薬】アンテベート酪酸プロピオン酸ベタメタゾン)、マイザー(ジフルプレドナート)、ネリゾナ(吉草酸ジフルコルトロン)
【注意点】かなり進行している皮膚炎、苔癬化、丘疹、多数の掻き痕など難治性の重症病変

Ⅲ群:強い・ストロング
【代表薬】リンデロンV(吉草酸ベタメタゾン)、ボアラ(吉草酸デキサメタゾン)、エクラー(プロピオン酸デプロドン)
【注意点】中等度までの皮膚炎、紅斑、少数の丘疹や掻き痕などの病変

Ⅳ群:普通・ミディアム(マイルド)
【代表薬】キンダベート(プロピオン酸デプロドン)、ロコイド(酪酸ヒドロコルチゾン)
【注意点】乾燥や軽微な紅斑、鱗屑を主体とした軽症病変

Ⅴ群:弱い・ウィーク
【代表薬】プレドニン眼軟膏(プレドニゾロン酢酸エステル)
【注意点】軽症以下で皮膚吸収率が高い部位の病変

※頻繁に処方されるリンデロンVG」は、Ⅲ群の「リンデロンV」抗生物質であるゲンタマイシン軟膏を混合した外用薬になります。名前にも示されているように、ゲンタマイシンの頭文字である「G」を加えたものです。

一方、同じ「リンデロン」という名前でも、「リンデロンDP」はⅡ群に分類され、リンデロンVやリンデロンVGよりも1ランク強いことに留意する必要があります。

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7. ステロイドはどの部位にどの強さの薬を塗ればいいの?

ステロイドなどの外用薬は使用部位によって吸収率が異なります。皮膚が薄い部位ほど薬の吸収率が高くなる傾向があります。そのため、同じ症状でも使用するステロイドの強さを調整する必要があります。以下は、上腕を基準とした体と部位による吸収率の図です。

この図を見ると、部位によって吸収率が大きく異なり、最大で何十倍もの差があることが分かります。

一般的に、皮膚吸収率を考慮して、体の大部分にはⅢ群の薬を、皮膚が厚い部位にはⅡ群の薬を、頭皮にはⅢ群の薬を、顔や首にはⅣ群の薬を第一選択として使用します。効果が不十分な場合には、1週間を限度として一段階強い薬を試すこともあります。また、乳幼児の場合は皮膚が薄いため、主にⅢ〜Ⅳ群の薬を使用することが適切です。

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8. ステロイド剤のやめ時がよくわからないんだけど?

一般的に、カブレや虫刺されなど、数日間の使用であれば完治後に使用を中止しても問題は起きません。ステロイド外用薬は副作用が比較的少ないですが、不必要な使用は逆に問題を引き起こすことがあります。ただし、長期間使用した後に状態が良くなったからといって、突然使用を中止すると再び悪化する可能性があります。
特に、成人が顔面や陰部のような皮膚の薄い部位に長期間使用した場合、突然の中止後に赤みが出たり悪化しやすいことが知られています。そのため、皮膚の状態を維持しながら、徐々に使用量を減らしたり、強さのランクを下げていくことが重要です。また、中止後に再び悪化しやすい場合は、プロアクティブ療法が推奨されます。
プロアクティブ療法は、反復する湿疹などの症状に対処する方法の一つです。まず、急性期の重症な症状を強いステロイド剤でしっかり治療し、その後は保湿剤を使用したスキンケアに加えて、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏、非ステロイドアトピー性皮膚炎治療薬(タクロリムス軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏など)を週に1〜2回塗布し、皮膚の健康な状態を維持する間欠療法を指します。

アトピー性皮膚炎では、見た目が正常でも内部に炎症組織が残っていることがあり、そのために炎症が繰り返し起こりやすいです。

プロアクティブ療法は、この潜在的な炎症を予防することで、毎日ステロイドなどの使用を減らしても炎症を管理することができます。ただし、この療法は意外にも難しく、急性期での十分な寛解が非常に重要です。急性期の治療を怠ると、中途半端な状態が長く続き、ステロイド外用薬の依存状態に陥る可能性があります。そのため、プロアクティブ療法は皮膚科医の指導の元で正しく行いましょう。

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9. ステロイドを使用しない方がいい場合ってあるの?

ステロイドは広範囲にわたる皮膚疾患の治療に効果的な外用薬ですが、全ての場合において安全に使用できるわけではありません。特に、細菌、真菌、ウイルスによる感染が疑われる皮膚病では、ステロイド外用薬の使用は避けるべきです。なぜなら、ステロイドは免疫を抑制するため、これらの感染を悪化させる可能性があるからです。以下、具体的な例を挙げてみます。

皮膚科の薬局で勤務していた経験から、とびひによるステロイド使用による悪化が最も多いと感じました。皮膚科以外でステロイドが処方され、患者がその効果を知らずに使い続けるケースがあります。特に乳幼児の場合、暑い季節にとびひが多く見られるため、保護者は疑わしい症状が出た際には専門の皮膚科を受診することが重要でしょう。

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10. ステロイド外用薬についてのまとめ!

  • ステロイドはそもそも体内で作られている副腎皮質ホルモンの一種
  • 怖いイメージは1990年代のテレビ番組により刷り込まれたものである
  • 外用薬の副作用は、発赤や多毛など局所的なもので、全身性のものはほぼない
  • アトピー性皮膚炎のガイドラインでは、ステロイドは最も推奨されているものの一つとなっている(推奨度1、エビデンスレベルA)
  • 強さは5段階に分かれ、症状と部位(皮膚の厚さ)によって変えて使用する
  • 細菌・真菌性、ウイルス性の皮膚疾患には基本使用不可
  • 長期使用後の急激な中止は再燃の可能性があるため、漸減療法やプロアクティブ療法を行う

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いかがでしょうか?今までステロイド剤に抱いていたイメージが、これにより大きく変化したのではないかと思います。もちろん薬である以上できれば使用しない方が良いですが、特にアトピーなど重症な皮膚症状にはとても有用なものです。

それでもステロイドが嫌だよという方や、ステロイド剤が皮膚に合わなかったり、ステロイドにアレルギーがある方向けに、ステロイド以外の治療法を次回以降また上げていこうかと思っています。それではまた次回お会いしましょう!

何とかしたい毎年ツラい花粉症。これが花粉症薬の決定版!!

No.6 春にとてもひどくなる花粉症。どんな対策していいか分からないから教えて!

花粉症は日本国内で最も一般的なアレルギー疾患の一つであり、その発症者数は今も増加の一途をたどっています。全国疫学調査では、1998年から20年で倍以上の有病率になったというデータも出ています。もう国民病と言っていいかもしれません。

早い方では2月頃から症状が現れ、目のかゆみや鼻づまりなど、日常生活に支障をきたす症状を抱える人々が少なくありません。このように広く見られる疾患でありながら、適切な治療を受けていない人が多いのが実情です。そこで、正しい知識を身につけ、日常生活でも症状を軽減できるよう努めていきましょう。

目次

1. 花粉症はそもそもなぜ起こるの?(花粉症の発症原因についての説明)

2. 花粉症発症率はどの地域が高いの?(花粉症の出やすい・出にくい地域の説明)

3. 花粉症はどんな症状が出やすいの?(花粉症の三大主徴、他の症状について説明)

4. 花粉症を予防するにはどうしたら良いの?(予防法についての説明)

5. 花粉症にはどんな薬があるの?(内服・点鼻・目薬についての説明)

6. 花粉症を完治させる薬があるって本当?(根治療法とその薬についての説明)

7. 花粉症についてのまとめ

 

1. 花粉症はそもそも何で起こるの?

花粉症の発症メカニズムは、免疫系の過剰反応によるものです。通常、ヒトの免疫系は体内に侵入した異物や病原体を検知し、それらを排除するために働きます。花粉症の場合、花粉などのアレルゲンが体内に侵入すると、免疫系がこれを異物と認識して反応を引き起こします。この反応により、特定の抗体(IgE抗体)が生成されます。

初回の接触でIgE抗体が生成され、再び同じアレルゲンに触れた際に、これらの抗体が過剰に反応し、炎症や症状を引き起こします。くしゃみや鼻水などの症状は、体が異物を排除しようとする自然な反応ですが、花粉症の場合は過剰な反応が起こります。

花粉症の症状が悪化すると、鼻づまりや目のかゆみ、皮膚のかゆみなどが現れ、日常生活にも大きな影響を及ぼします。このように、免疫系の過剰反応が花粉症の症状を引き起こす仕組みとなっています。

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2. 花粉症発症率はどの地域が高いの?

日本で圧倒的に花粉量が多いのは、スギ、ヒノキの花粉になります。これらが多い中部地方や、コンクリートが多く花粉が散乱しやすい関東地方発症率が高いです。逆に、北海道沖縄はスギやヒノキが極端に少ないため、飛散している花粉量も少なく花粉症患者もかなり少ないです、毎年ツラい花粉症に悩まされている方は、移住を考慮に入れて良いかもしれませんね。

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3. 花粉症はどんな症状が出やすいの?

花粉症の典型的な症状には、鼻水くしゃみ鼻づまりがよく見られます。これらは一般に「三大症状」と呼ばれています。花粉が体内に入ると、アレルギー反応が始まり、最初にヒスタミンという物質が生成されます。この物質によって、鼻水やくしゃみなどの症状が引き起こされます。その後、しばらくするとロイコトリエンという物質が生成され、これが血管を刺激して鼻づまりを引き起こす原因となります。

花粉症が引き起こす影響は、単に目や鼻の症状だけではありません。日常生活における花粉症の影響に関するアンケート結果では、仕事や勉強家事などへの支障が最も多く報告されています。また、思考力や集中力の低下も頻繁に挙げられています。さらに、疲労感や倦怠感、うつ症状などの精神的な影響もあります。

これらの影響は、とても厄介なことに本人が自覚しないうちに現れることがあります。しかし、これらの影響を認識していれば、適切な対策や治療を行うことができるかもしれません。つまり、花粉症が日常生活に与える悪影響を理解することは、適切な対処法を見つける上で重要です。

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4. 花粉症を予防するにはどうしたら良いの?

花粉症を予防する最も効果的な方法は、体内に花粉を入れないことです。そのために最も有効な手段は、マスクの着用です。外出時にマスクを着用するかしないかで、鼻腔内に侵入する花粉の量が大きく変わることが報告されています。

さらに、他の予防方法としては、メガネの装着うがいや洗顔帰宅後の服の清掃、部屋の掃除などの基本的な衛生習慣を実践することが挙げられます。これらの対策を行うことで、体内に入る花粉の量をかなり減らすことができます。

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5. 花粉症にはどんな薬があるの?

【花粉症の薬の目次】

A. 内服薬
●抗ヒスタミン内服薬

●抗ヒスタミン剤とステロイド剤の配合内服薬

●抗ロイコトリエン内服薬
  

B. 外用薬
点鼻薬
●抗ヒスタミン、抗アレルギー点鼻薬
●ステロイド点鼻薬
●血管収縮剤 
⑵点眼薬
●抗ヒスタミン、抗アレルギー点眼薬
●ステロイド点眼薬
●免疫抑制目薬 

【薬の説明】
A. 内服薬

●抗ヒスタミン内服薬
第一に、花粉症の主要な原因は、前述した通りヒスタミンです。ヒスタミンは主に鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどを引き起こし、そのために抗ヒスタミン薬が治療に用いられます。抗ヒスタミン薬には、内服薬、点鼻薬、目薬など、症状に応じてさまざまな形態があります。ただし、抗ヒスタミン薬には眠気ふらつき集中力低下などの副作用があり、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
以下のものがよく処方される抗ヒスタミン薬です。・医療用医薬品の先発品名(一般名):市販薬名の順で記載しています。

また、以下の薬において1日1回タイプのものにアンダーラインを引いておきます。
⑴眠気のほとんど出ないタイプ(添付文書に運転注意の記載なし)。
・アレグラ(フェキソフェナジン):アレグラFX、アレルビ、ケアビエン、フェキソフェナジンα、AG、STなど
クラリチン(ロラタジン):クラリチンEX、ロラタジンAG、RXなど
デザレックス(デスロラタジン)、ビラノア(ビラスチン):該当なし
⑵眠気が比較的出にくいタイプ
アレジオン(エピナスチン):アレジオン20、エピナスチンRX、ナブルシオン20など
・ タリオン(ベポタスチン):タリオンAR
エバステルエバスチン):エバステルAL(現在生産終了)
⑶やや眠気を引き起こしやすいタイプ
ジルテック(セチリジン):新コンタック鼻Z、ストラリニZジェル
・ザイザル(レボセチリジン)、ルパフィン(ルパタジン):ともに該当なし
このタイプは車の運転などにはかなり注意が必要です。個人差があり何も感じない方もいますが、私は久しぶりに飲むと、翌日1日中寝てなくてはいけないほど眠気が出ることもあります。

よく患者さんから質問があったのは、どの抗ヒスタミン薬が強いのか?でした。その回答としては、どれも効果や副作用には個体差があり、一概にどれが強いものかは人それぞれ、が正解だと思います。よって、1ヶ月程度などある期間継続し、比較してみて一番良いと思ったものを服用することが一番です。

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抗ヒスタミン剤ステロイド剤の配合内服薬
ヒスタミン薬では効果が現れるまでに時間がかかる場合や、症状が深刻な時には効果が不十分なことがあります。このような場合に対応できるのが、抗ヒスタミン薬とステロイド剤が配合された薬です。ただし、ステロイド内服剤には免疫低下などの全身性のものや、消化性潰瘍など多くの副作用があります。そのため、基本的には症状が非常にひどい場合にのみ使用し、かつ、医師の指示に従って正しく使用する必要があります。
市販薬はなく医療用医薬品として処方箋でのみ手に入り、すべて同一成分で、セレスタミン、サクコルチン、エンペラシンなどの薬があります。

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●抗ロイコトリエン薬
もう一つの主要な症状である鼻づまりの原因は、前述の通りロイコトリエンという物質になります。したがって、抗ヒスタミン薬だけでは不十分です。多くの場合、症状が重なることがありますので、抗ロイコトリエン薬と抗ヒスタミン薬を併用することで効果が高まります。また喘息を併発されている方には特に推奨されています。抗ロイコトリエン薬は市販されておらず、処方箋が必要です。代表的なものには、キプレスやシングレア(モンテルカスト)、オノン(プランルカスト)などがあります。

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B. 外用薬
点鼻薬
点鼻薬には主に3種類あります。それぞれの種類によって異なる効果がありますので、症状や程度に応じて適切な点鼻薬を選びましょう。

●抗ヒスタミン、抗アレルギー点鼻薬
これらは内服薬に使用されている成分を、点鼻薬として利用したものです。即効性はやや高いですが、効果としてはやや弱いため、軽度の症状に適しています。以前は主流でしたが、ステロイド点鼻薬が登場して以降は補助的な役割となっています。
ヒスタミン薬の処方薬としては、ザジテン点鼻液(ケトチフェン)、レボスチン点鼻液(レボカバスチン)、抗アレルギー薬としてはクロモグリク酸点鼻液があります。市販薬は以前は存在しましたが、現在では調査した限りでは見当たりません(他の成分と混合された市販薬は多数ありますが、ここでは挙げる意味がないため省略します)。

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ステロイド点鼻薬
現在の主流となっている点鼻薬で、耳鼻科などで数多く処方されます。軽度な症状から毎日定期的に使用することで、ピーク時期の悪化を抑えることができます。鼻水、くしゃみ、鼻づまりの3大症状を抑える効果があります。

ステロイド点鼻薬にはいくつかの誤解があります。まず、副作用に関するものです。薬の成分は主に患部に効果を発揮し、ほとんど体内に吸収されません。したがって、副作用は局所的なものであり、免疫抑制や消化性潰瘍などはほとんど心配ありません。

また、即効性に関しても誤解があります。ステロイドは強力なイメージがありますが、点鼻薬には即効性がありません。したがって、一度使用してもすぐに効果を感じることはありません。1日1回の使用で済む便利な製品もありますので、毎年鼻づまりなどに悩まされる方は、安定して症状が落ち着くまでは継続することをお勧めします。

医療用医薬品としては、アラミスト点鼻液(フルチカゾンフランカルボン酸)ナゾネックス点鼻液(モメタゾンフランカルボン酸)エリザス点微粉末(デキサメタゾンシペシル酸)フルナーゼ点鼻液(フルチカゾンプロピオン酸)などがあります。

市販薬では、エージーアレルカットEXc、ナザールαAR、パブロン鼻炎アタックJL、フルナーゼ点鼻液などがあります。使い勝手からすると、1日1回の医療用医薬品がオススメです。

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●血管収縮剤
このタイプは以下のものが主要な点鼻薬製品です。
以下、・医療用医薬品の先発品名(一般名):市販薬名として記載しています。
・プリビナ液(ナファゾリン):アルガード ST鼻炎スプレー、スットノーズαプラス点鼻薬、タイヨー鼻炎スプレーAG、ナザールスプレー、ビタトレール 鼻炎スプレーなど
・コールタイジン点鼻液(塩酸テトラヒドロゾリン):コールタイジン点鼻薬
・該当なし(オキシメタゾリン):ナシビンMスプレー
(注意)これらのほとんどは抗ヒスタミン剤や他成分とも配合されていますが、事実上血管収縮薬としてみてください。

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⑵点眼薬
目薬もその目的に応じて主に3種類があります。またコンタクト装着時も、その種類によりとても注意すべき点があるため、以下を参照してください。

●抗ヒスタミン、抗アレルギー点眼薬
目薬の抗ヒスタミン薬も内服と同様に、即効性はありません。したがって、症状がひどい場合は、花粉症の流行前からの使用がおすすめです。
主流な医療用医薬品としては、抗ヒスタミン剤としてアレジオン点眼液(エピナスチン)、その使用頻度を減らしたアレジオンLX点眼液、パタノール点眼液(オロパタジン)、リボスチン点眼液(レボカバスチン)があります。補助的な抗アレルギー剤として、インタール点眼液(クロモグリク酸Na)、アレギサール(ペミロラストK)点眼液なども利用されます。

【コンタクト装着時の目薬使用上の注意】ソフトコンタクトレンズを普段ご使用の際に、目薬を使用する際には、注意が必要です。目薬には通常、防腐剤が含まれており、主に塩化ベンザルコニウムという成分が使われています。この防腐剤はソフトコンタクトレンズに吸着しやすく、直接目に付着すると目を傷つける可能性があります。また、コンタクトレンズそのものに変形や変色を引き起こす可能性もあります。したがって、目薬を使用する際には、必ずコンタクトレンズを外してから行うようにしてください。なお、カラーコンタクトレンズに関しては特に注意が必要です。

一方、ハードコンタクトレンズワンデーコンタクトレンズに関しては、一般的に問題ありませんが、酸素透過性の高いコンタクトレンズについては外した方が良いとされています。

そこで医用用医薬品の中で現在唯一塩化ベンザルコニウムが入っていない、アレジオン点眼液(LX含む)がとても有用です。これから眼科にかかる方は、医師と相談して本剤を処方してもらうと良いと思います。

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ステロイド点眼薬

ステロイドの目薬は、即効性が非常に高く、よく用いられる薬です。しかし、目に使用するため、副作用が問題になることがあります。特に代表的な副作用として、眼圧上昇が挙げられます。無闇な長期使用は、ステロイド緑内障と呼ばれる元に戻りにくい状態を引き起こす可能性があります。そのため、医師や薬剤師の指示に従い、悪化時に限定して使用することが重要です。

市販薬としては販売されていませんが、医療用医薬品として、フルメトロン点眼薬やオドメール点眼薬(フルオロメトロン)などがあります。

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●免疫抑制目薬

昔は春季カタルなどの重症例には、ステロイド点眼薬を使用する必要がありました。しかし、近年、元々内服薬として存在していた成分が点眼薬として開発され、現在では2種類の目薬が処方されています。これにより、ステロイド点眼薬の最大の懸念であった眼圧上昇を気にせずに使用できるようになりました。ただし、重症度によっては、ステロイド点眼薬も併用することがあります。

免疫抑制剤は副作用が気になるところですが、使用が局所的であるため、全身的な副作用はほとんど心配する必要はありません。ただし、目の感染症には十分な注意が必要です。

医療用医薬品として、パピロックミニ点眼液(シクロスポリン)やタリムス点眼液(タクロリムス)の2種類があります。特にタリムス点眼液は効果が強力であり、効果の発現も早く、重症例やステロイド点眼薬で効果が得られない場合にも有用とされています。

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6. 花粉症を完治させる薬があるって本当?

これまで紹介した薬は、すべて症状の軽減や管理に焦点を当てた対症療法であり、長期間の使用が必要です。しかし、スギ花粉に限定されますが、舌下免疫療法が開発されました。これは減感作療法で、簡単に言えば、少量のアレルゲンを体内に摂取し、体内でアレルゲンを徐々に慣れさせていくものです。これは従来の治療法とは全く異なります。

この治療は花粉症の流行期間中に行うと悪化する可能性があるため、その期間を避けて6〜12月の間に行います。通常、3〜5年の間継続され、即効性を期待するものではありません。効果としては、2割が完治し、6割が症状の改善を実感し、残りの2割は効果が見られないとされています。この治療法は、鼻づまりだけでなく、目のかゆみや集中力低下など、花粉症が引き起こすあらゆる症状に効果があります。また、治療終了後も薬物使用量を長期間にわたり減らすことが期待されます。

この治療法も市販されておらず、処方箋が必要です。現在、シダキュアシダトレンの2種類が存在します。

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7. 花粉症対策のまとめ!

・花粉症患者は20年で倍以上になり、現在も増加中である

・花粉症は鼻水、くしゃみ、鼻づまりが主症状も、他日常生活にも悪影響がある

・予防はマスクが第一、他なるべく清潔にして花粉を体内に取り込まないこと

・内服は抗アレルギー薬が基本、即効性はないため予防的に早めに始めることが重要

・スギ花粉に対しては免疫療法もあり、正しい服用で2割が完治、6割は症状の改善あり

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現代は日本人の3〜4人に1人は花粉症になる時代です。市販でも処方箋による医薬品もあふれかえっており、どれがが良いのかその特徴がどうなのか分かりにくいですよね。これらを読めば一気に解決できるでしょう。また根治を目指す免疫療法も出ています。また新しい薬があればどんどん更新していくので、流行期になったらまたブログを読みにきてくださいね。

 

 

夢のような痩せ薬⁉️「ウゴービ」を徹底解説‼️

No.5 新しい痩せ薬が出ると聞いたんだけど、どんなものか詳しく知りたい!!

 

最近、市場に新しく登場する「ウゴービ」は、多くの人々の関心を集め、ニュースでも話題になっていますね。一般的な市販のダイエット製品とは異なり、ウゴービは基本的には処方箋が必要な医薬品です。そのため、多くの人が効果や安全性について疑問を抱くかもしれません。特に女性にとって、体重の増減は永遠の悩みであり、これに関連した製品には慎重になる必要があります。今回は、この新薬「ウゴービ」について詳しく解説していきます。※発売日は2024年2月22日となっています。

 

目次

1. このやせ薬は誰でも出してもらえるの?

2. ウゴービにはどのような作用があるの?

3. ではどのくらい効果はあるの?

4. ウゴービって注射なんだけど、どうやって使うの?

5. やっぱりよく効く薬だし、新薬だから高い?

6. ウゴービの使用を控えた方が良い人は?

7. ウゴービを打てば誰でもやせられるの?

8. ウゴービにはどんな副作用があるの?

9. 注射を中止したら、リバウンドしてしまう?

10. ウゴービについてのまとめ

 

1. このやせ薬は誰でも出してもらえるの?

結論から言うと、処方薬としては「ウゴービ」は、あくまで過剰な肥満の治療薬であり、美容目的での処方は残念ながらできません。一方、自由診療であれば受けることはできるようです。ただし、本薬の乱用を防ぐために、施設基準など厳しいようで、まだ自由診療すらも数が少なく困難かもしれません。それでも、危険性も少なくないため、医師の監修のもと、正しい使用をしなくてはいけません。

処方薬としての対象者は、高度の肥満症(35kg/㎡以上)か、高血圧など2種以上の合併症を持つ肥満症(27kg/㎡以上)の方のみで、厳しい審査が必要です。

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2. ウゴービにはどのような作用があるの?

そもそもこの薬と同じ成分の製品は、糖尿病の薬として以前から存在していました。オゼンピック注射薬やリベルサス内服薬がそれにあたり、体内で分解されないようにして、改良されたものがウゴービになります。

この薬の作用の本元としては、GLP-1という受容体を刺激するものです。GLP-1とは別名やせホルモンとも言われ、血糖値のコントロール食欲減退および満腹感を亢進させることができます。また、基礎代謝を上げる作用もあるようです。

 

ウゴービ(セマグルチド)は、特に膵臓のβ細胞上にあるGLP-1受容体に結合します。そして、主に食後など血糖上昇時にインスリンの分泌を増やし、逆にグルカゴンの分泌を抑制します。また、この薬はアルブミンと結合して代謝が遅れ、腎臓での除去が少なくなるため効果が持続します。DPP-4という酵素に対する抵抗性も示し、その結果、食欲を減退させ、満腹感を増加させ、食べ物の胃での滞留を促すことで体重の増加を抑制します。

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3. ではどのくらい効果はあるの?

専門医の元で食事制限と合わせれば、週1回の使用を約1年3〜4ヶ月継続することで、平均15%ほどの減量が示されています。あれ、なんか言うほど効いていないのでは?と思った人もいるかもしれません。現在日本で発売されているサノレックスという薬がありますが、それと比較しても効果は抜群であると言えます。またサノレックスは、その危険性の疑いから最大3ヶ月の制限もあります。

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4. ウゴービって注射なんだけど、どうやって使うの?

ウゴービは皮下注射で、毎回の使用部位を2〜3cm離して、上腕部、腹部、大腿部のどこかに注射します。これは皮膚の硬化を防ぐためのものです。

週に1回の使用なので、忘れにくいです。定期的な曜日に注射するのが良いでしょう。もし定期的な曜日に忘れた場合は、次回の注射予定日との間が2日以上あれば、すぐに注射してください。次回の注射予定日から2日以内に2回注射することや、1回で2回分の量を注射することは非常に危険ですので、絶対に行わないようにしましょう。

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5. やっぱりよく効く薬だし、新薬だから高い?

この点に関して、理解が難しいかもしれませんね。基本的には、ウゴービは短期間ではなく、長期的に使用される薬です。そのため、経済的な負担も懸念されるでしょう。言い換えると、処方箋で入手できる場合はなんとか負担が軽減されますが、自由診療ではかなりの負担がかかる可能性があります。以下に、ウゴービの通常の使用量と価格を示しますが、保険適用の場合、通常は3割負担ですので、薬価の30%に加えて、診療料や薬局での調剤費用などもかかります。

通常用量:0.25mg×4回→0.5mg×4回→1.0mg×4回→1.7mg×4回→2.5mg(継続)

前述の通り、基本的に週に1回の注射が必要なため、最初は0.25mgから始め、4週間ごとに増量し、最終的に2.5mgで維持されることになります。

用量/薬価(3割ベース/1ヶ月ベース(4週間分))

0.25mg/1,876円(約563円/約2,501円)

0.5mg/3,201円(約960円/4,268円)

1.0mg/5,912円(約1,774円/約7,094円)

1,7mg/7,903円(約2,371円/約9,484円)

2.5mg/10,740円(3,222円/12,888円)

最終的には2.5mgを維持するため、保険適用の場合、月額は約1.5千円程度になるかもしれません。自由診療の場合、薬価の100%に加えて、価格を調整する余地がありますので、月額は何万円にもなる可能性があります。

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6. ウゴービの使用を控えた方が良い人は?

ウゴービの使用の際の適応にあっていても、使用が推奨されない方もいます。

1. 妊娠中または妊娠の可能性のある方: 動物実験において妊娠中の使用により、胎児毒性が認められた報告があります。妊娠の可能性がある場合は、医師に相談しましょう。

2. 15歳未満の小児: ウゴービ注の安全性と効果に関する臨床試験は、この年齢グループに対しては行われていません。そのため、小児への使用は推奨されません。

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7. ウゴービを打てば誰でもやせられるの?

ウゴービを使用すれば誰でも痩せることができるのかという点については、断言することはできません。外国や日本での研究では、肥満症に対するウゴービの効果が示されていますが、これは専門の医師の指導のもとで、適切な食事や運動療法と組み合わせて行われた場合の効果です。

食事や運動療法なしにウゴービだけを頼りにしても、効果を得ることは難しいでしょう。実際、運動を行わずに栄養の偏ったファストフードばかりを摂取し続けると、ウゴービの効果が得られないだけでなく、使用中止後にリバウンドを起こしやすくなったり、別の健康問題が発生する可能性もあります。ただし、なかなか自分の意思で食事制限をすることは難しいですよね。

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8. ウゴービにはどんな副作用があるの?

それほどの効果がある薬ならば、副作用も多くあるのでは?と考えるかもしれません。結論から言えば、適正に使用している限りはそこまで重大な弊害は多くはないです。

それでは、具体的に重大な副作用と、起きやすい副作用について説明します。

重大な副作用としては、

1. 低血糖:脱力感、倦怠感、冷や汗、頭痛、めまいなどが起こることがあります。この  ような症状が出たら、すぐに糖分を摂取しましょう。

前述した通り、本剤は元来糖尿病の薬であり、かつ肥満症の薬とするため最終的には用量を多く投与します。それを考えると低血糖は十分考慮すべき副作用です。ただし、そもそもGLP-1受容体作動薬と呼ばれるものは、他の糖尿病の薬と比較して低血糖が出にくいように設計されています。それでも、他糖尿病薬であるSU薬などと一緒に使用する場合はより注意が必要です。

2. 急性膵炎:嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛など、異常があればすぐ中止しましょう。

 

頻度の高い副作用としては、

食欲不振、吐き気、便秘、下痢、頭痛などが挙げられます。GLP-1は胃からの排泄を遅らせる作用があるので、これも当然の副作用と言えます。これらは日常生活に支障をきたすようであれば、医師と相談して減量や休薬などの対処が必要になります。逆に、軽微な食欲不振であれば、これを境に食事量を継続的に減らしていけると言う手もありますね。

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9. 注射を中止したら、リバウンドしてしまう?

残念ながら、リバウンドに関しては他の薬やダイエットと同様にあるようです。ウゴービを続けてさえいれば、かなり効果は保持できるようですが、基本68週までの使用と決められています。一定の条件下で再開もできますが、やはり最終的には生活習慣の改善が必要なようです。

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10. ウゴービについてのまとめ

●週1回の皮下注で、元々は糖尿病の薬として出されていた薬を改良したもの

●高度の肥満か複数の合併症を伴う肥満など、処方薬としての条件は厳しい

●1年4ヶ月弱ほど継続することにより、平均15%の減量が期待できる

エビデンスがある効果としては、食事や運動療法を組み合わせたものである

●妊婦や2か月以内に妊娠のある可能性のある方、小児は使用を控える

低血糖や急性膵炎などの重大な副作用、食欲不振などの消化器症状がある

●リバウンドは他ダイエット方と同様で、結局は生活習慣の改善が必要

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いかがだったでしょうか?食事療法を併用したり注意すべき副作用もあったりなど、留意すべき点は多々ありますが、今までの肥満薬と比較しても画期的な薬であることは間違いありません。日本ではまだまだ、肥満は自己責任という考えが主流となっています。ただこれだけの生活習慣病につながる方がいる現実がある限り、自分の意思だけでこれらを克服するのはかなり至難ではないでしょうか?

本剤において、まだ日本での絶対的データが足りていません。それに現状ウゴービを提供できる医療機関も相当限られており、かつGLP-1受容体作動薬自体が日本では顕著に不足しています。よって、まだまだ身近に使用できるようになる日は当分先かもしれません。

これから新しいデータが手に入れば、その都度更新していきたいと思います。

 

 

帯状疱疹のホントウが分かる素朴なギモン

No4 帯状疱疹ってうつるものなの?痛みが強い皮膚病らしいけど、そもそもどういうもの?

現代において、帯状疱疹の患者数が増加しているという話題が広がっています。私自身、皮膚科門前の薬局で長い勤務経験がありますが、過去と比較して明らかに患者数が増えていると感じています。特に気づくのが遅れがちで、患者さんが来院される時点で症状が進行していることが多いように思われます。いつ起こるかも分からない帯状疱疹について、正しい知識を持って対処することが重要です。

目次

1. 帯状疱疹とは?なぜビリビリとした痛みが現れる?

2. 帯状疱疹の見分け方は?

3.実際に帯状疱疹の患者数は増加しているの?

4. 増加要因は何?コロナワクチンが影響している?)

5. できる限り早く薬を飲むことが重要。早めの受診をするべきだ!

6. 帯状疱疹の痛みはとても苦しい?

7. 帯状疱疹って痛み以外にも合併症があるの?)

8. 帯状疱疹がうつるのか心配なんだけど?

9. ワクチンで予防できるの?

10. 帯状疱疹についてのまとめ

1. 帯状疱疹とは?なぜビリビリとした痛みが現れる?

帯状疱疹は、主に水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染が原因です。VZVは、水ぼうそうとして幼少期に感染することがほとんどで、その後症状が消失しても、ウイルスは神経節内に潜伏し続けます。成人になり免疫力が低下したりストレスなどの要因で再び動き出し、神経を通って体表面に到達することで、帯状疱疹が引き起こされます。帯状疱疹の特徴的なビリビリとした神経痛は、感染した神経によって引き起こされます。また、症状が治まったとしても、ウイルスは完全に消失せず、一部の人では再発する可能性があるため、体力をつけて予防に努めるようにしましょう。

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2. 帯状疱疹の見分けかたは?

帯状疱疹の特徴的な症状には、最初に神経痛のような痛みが現れ、その後、小さな水疱を伴った赤みが広がっていくことが挙げられます。また、最も顕著な特徴は、症状が体の左右どちらか片側にのみ現れることです。しかし、注意が必要なのは、痛みと発疹の順番が逆であったり、どちらかが全く現れない場合があることです。

さらに、皮膚症状が現れる部位と痛みを感じる部位が一致しない場合もあります。これが皮膚科への受診を遅らせる主な原因です。例えば、帯状疱疹が体に現れた場合には、頭痛や腰痛など、関連のない部位の痛みが引き起こされることがあります。したがって、普段と異なる痛みを感じた場合は、早めにクリニックを受診することをお勧めします。

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3. 実際に帯状疱疹の患者数は増加しているの?

医師や薬剤師が増加を感じるだけでなく、統計的なデータもこの増加を裏付けています。1997年からの20年間の調査によれば、帯状疱疹年間発症数は1.8倍も増加しているとの結果が出ています。この数字は驚くべきものであり、私自身が感じていた以上の増加率です。

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4. 増加要因は何?コロナワクチンが影響している?

増加の主な理由として、2014年に水痘ワクチンの定期接種が始まったことが挙げられます。この接種開始以降、以下のような影響が見られます。

  1. 水痘の流行が激減し、それに伴い大人が水痘ウイルスに接触する機会が減少。
  2. ブースター効果の低下。ブースター効果とは、ウイルスに対する再感染時の免疫反応のことですが、この効果が十分に発揮されなくなっています。

さらに、高齢者の人口増加帯状疱疹の増加に寄与しています。免疫力が低下すると帯状疱疹の発症リスクが高まるため、高齢者の罹患率も増加しています。

コロナワクチンの影響については、一部で議論されています。予防接種によって産生されるスパイクタンパク質が、帯状疱疹を引き起こす原因とされる考えもあるようです。ただし、この見解についてはまだ疑問が残るところです。実際にそのような事例が報告されていますが、十分なサンプル数や調査期間が確保されていないため、、極端な意見に惑わされることなく、客観的な情報を選択することが重要です。

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5. できる限り早く薬を飲むことが重要。早めの受診をするべきだ!

それでは、病院で処方される内服薬について解説します。帯状疱疹に関しては、内服薬中心の治療を行います。

現在では主に、バラシクロビル(バルトレックス)、ファムシクロビル(ファムビル)、アメナリーフの3種類が処方されます。

3種類全てに共通する特徴は以下の通りです

  • ウイルスの増殖を抑える作用がありますが、体内に既に存在しているウイルスを排除することはできません。したがって、発症後できる限り早く薬を飲む必要があります。
  • 理想は発症直後の服用ですが、発症後3日ほど経過しても、ある程度は薬の効果は期待できるので、医師に処方された薬は確実に服用しましょう。
  • 錠剤は比較的大きく、通常の用量は1回2錠となっており、飲みにくいと感じる方もいます。しかし、粉砕することで摂取しやすくなります(ただし、粉砕した場合には苦味があります)

バラシクロビルとファムシクロビルの特徴は以下の通りです。

  • これらの薬は主に腎臓で排泄されるため、腎機能が低下している方や高齢者などは投与量の調節が必要です。
  • 薬剤が尿細管で結晶化し急性腎不全を起こす恐れがあるため、それを予防するように水分摂取が推奨されます。また、これらの薬は脳に移行しやすいため、眠気や頭痛などの副作用が発生することがあります。
  • 他の薬との飲み合わせの問題が少ないため、他の多くの薬を服用している方でも比較的安心して使用できます。

アメナリーフの特徴は以下の通りです。

  • 脂溶性の薬より吸収を向上させるために、できる限り食後服用を守りましょう。
  • この薬は肝臓で代謝されるため、腎機能が低下している高齢者でも比較的安全に使用できます。また肝代謝CYP3Aという酵素で行われており、この酵素代謝される薬の種類が多いため、互いに影響しないよう他の薬剤との飲み合わせの注意が必要になります。
  • 1日1回のみの投与で、忘れリスクが低いです。

※忘れた場合は、よほど次の服用時間に近くなければ、少しでも食事をとった後にすぐ服用しましょう。

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6. 帯状疱疹の痛みはとても苦しい?

合併症の代表である帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹から回復した後も、患者に長期間にわたる痛みをもたらす可能性があります。痛みの程度は個人によって異なり、時には眠ることさえままならないほどの激しいものです。急性期の痛みの程度がPHNへの移行に影響を与えるため、急性期の痛みを速やかに緩和することが重要です。

●急性期の痛みの管理

急性期の帯状疱疹に伴う痛みを管理するために、抗ウイルス剤とともに一般的に以下のような鎮痛剤が処方されます。

  1. アセトアミノフェン製剤(カロナールなど):急性期の痛みを和らげるためによく使用されます。作用が緩和であるため万人に使いやすい鎮痛薬です。
  2. ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ロキソニンなどが代表的ですが、特に腎排泄の抗ウイルス薬(バラシクロビル、ファムシクロビル)を飲んでいる場合は、腎機能が低下している方や高齢者では、併用の際は特に注意が必要です。

また、急性期の痛みを緩和するために神経ブロックが行われることもあります。

帯状疱疹後神経痛(PHN)の治療

PHNに対する従来の鎮痛剤が効果を発揮しづらい場合、以下のような薬物治療が行われます。全ての薬に共通して、神経障害に対する痛みに加えしびれも抑えます。ただし副作用として、眠気ふらつきなどが出やすいことが知られています。

  1. 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン):安価で長期でも経済的負担が少ないことが利点。ただし、抗コリン作用があるため、前立腺肥大症や緑内障を持つ方は注意が必要でです。
  2. α2δリガンド(プレガバリン、ガバペンチン)睡眠の質や抑うつ不安も改善します。弊害として、体重増加する恐れがあり、腎機能が低下している高齢者では減量が必要です。またプレガバリンの眠気やふらつきは、他薬より高確率で出やすいためより注意です。
  3. SNRI(デュロキセチン):三環系抗うつ薬よりも安全性が高く、心疾患を持つ患者にも適しています。

PHNとなれば皮膚科では対応しにくいため、ペインクリニックに紹介状を書いてもらい通うことになります。早めに対応し、痛みの長期悪化を防いでいけるようにしましょう。

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7. 帯状疱疹って痛み以外にも合併症があるの?

合併症としては、上記したPHNが特に有名ですが、まだまだ気をつけなければいけないものがあります。その中でも代表的なものをいくつか挙げておきます。

  1. ラムゼイ・ハント症候群: VZVによって顔面神経麻痺を主体とした疾患です。加えて、周囲の脳神経にも波及して、耳痛、難聴、めまいなどが起こることもあります。
  2. 帯状疱疹脳症: VZVが顔面や頭部の神経に感染することで、脳に影響をおよぼし、主症状としては、発熱、頭痛、嘔吐、意識障害などがあります。発生頻度としては、1%以下と低いですが、罹患すると致死率が10%程度であるため要注意です。
  3. アシクロビル脳症:抗ウイルス薬であるアシクロビル、またはそのプロドラッグであるバラシクロビルにより、主に腎機能低下患者で誘発されやすい障害です。意識障害、幻覚、錯乱など多彩な症状が起こりうるのが特徴です。

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8. 帯状疱疹がうつるのか心配なんだけど?

ウイルスが原因であるため、家族への伝染が心配であると思います。基本的には帯状疱疹はうつらないため、日常生活の中では問題することはありません。

ただし、まだ水ぼうそうにかかったことのない方に、患部が直接触れたりすると、水ぼうそうとしてうつってしまう恐れがあります。そのため、念のために直接肌を接触したり、特に水疱になっている部位はウイルスが密集しているため、患部をガーゼなどで覆っておいた方が良いででしょう。

口唇ヘルペス性器ヘルペスを含む単純ヘルペスは、帯状疱疹と症状が類似していますが、実際には異なる疾患です。これらの疾患の原因ウイルスは帯状疱疹とは異なり、単純ヘルペスウイルス(HSV)として知られており、感染力が非常に強いです。よって、口唇ヘルペスなどの場合、他者との接触やタオルなどを介した接触をできるだけ避けることが重要です。

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9. ワクチンで予防できるの?

現在、帯状疱疹に対するワクチンは、比較的最近発売された、シングリックスと呼ばれる不活化ワクチンと、以前からあるビケンと呼ばれる生ワクチンの2種類があります。

発症率が急激に高くなる50歳代からの接種が推奨されています。各ワクチンの長所や短所に見合った方を選択すると良いでしょう。

以下比較表を参考にしてください。

 

 

ビケン

シングリックス

ワクチン種類

生ワクチン

不活化ワクチン

接種回数

1回(皮下注)

2回(筋注)

予防効果

50%強

90%以上

疼痛予防効果

65%程度

85%以上

効果持続期間

5年程度

9年程度

主な副反応

接種部位の赤み

接触部位の発赤、全身倦怠感

費用(※)

5,000〜10,000円/回

2万〜2万5千円/回

長所

1回で済み、かつ安い

副反応が非常に出にくい

予防効果が高く持続期間長い

免疫低下してる方にも接種可

短所

予防効果がやや低い

妊婦や免疫低下者に不向き

かなり強い痛みがある

2回の接種が必要かつ高価

※費用は病院や診療所によって異なります。特にシングリックスは高価ですが、地方によっては補助金が出る地域もあります。「帯状疱疹ワクチン接種費用助成自治体一覧」で検索すれば一覧で出てくるので、自分の自治体を確認しておくと良いでしょう。

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10. 帯状疱疹についてのまとめ!

帯状疱疹は免疫力、体力低下したときに帯状疱疹ウイルスによって発症する

帯状疱疹はうつらないが、口唇ヘルペスなどの単純ヘルペスはうつりやすい

●薬は主に3種類の内服薬があり、5〜7日間ほどの服用が必要。外用はほぼ無効

●薬の効果発現、その後の疼痛予防と2つの観点から早期服用が重要

●急性期の痛みは合併症のPHNの移行に影響するため、今の疼痛の最大限の抑制が推奨

●ワクチンには発症率が高い50歳以上が推奨され、10年近く予防できるものもある

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いかがだったでしょうか。帯状疱疹は、その痛みや合併症から、患者やその家族にとって重大な懸念となることがありますが、正しい知識と適切な対処法によって管理することができます。早期の診断と適切な治療は、合併症のリスクを最小限に抑えるために不可欠です。このブログにより重症化しなくて助かった、ということになっていただければとても幸いです。