spect1975のブログ

門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

意外と間違えてしまっている?薬剤師が教える薬の正しい服用法の基本

No.17 薬の適正服用ガイダンス

目次

  1. はじめに〜薬を正しく服用する意義〜
  2. 服用時間の理解
  3. 飲み方のポイント
  4. 特殊な服用方法である薬
  5. 正しい薬の服用法のQ & A
  6. 薬の正しい服用法のまとめ

 

1.はじめに〜薬を正しく服用する意義〜

薬を正しく服用することは、その効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるために非常に重要です。正しい服用法を理解し実践することで、薬の治療効果を最大限に活用することができます。薬によっては指示された飲み方以外では、薬の効果がほとんど発揮されなかったり、逆に薬の効果が強く出過ぎたりなど、様々な弊害が起こる恐れもあります。

・効果の最大化
薬は適切なタイミングで服用することで、体内の吸収率が大きく変わることがあります。例えば、血糖値を下げる薬の中には、食後に服用してもほとんど効果がないものもあります。正しいタイミングで服用しないと、毎日飲んでいるにもかかわらず、期待した効果が現れないこともあります。
・副作用の最小化
薬を誤ったタイミングで服用すると、思わぬ副作用が出る恐れがあります。薬は正しく服用することを前提に作られているため、自己判断での服用は避けましょう。例えば、鎮痛剤など胃に負担がかかるものは特に、空腹時の服用で胃が荒れやすくなったりします。
・適正治療の効率化
医師は正しく薬を飲んでいることを前提に治療方針や薬を設定します。適正な薬の服用により、治療が無駄に長引くことを防ぎ、余計な薬を服用する必要がなくなります。治療が効率的に進むことで、患者の負担も軽減されます。

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2.服用時間の理解

意外と服用時間を正しく理解していない方が少なくありません。薬を毎日しっかり飲んでいるのに効き目が鈍い場合、例えば食前服用の薬を食事の直前に飲んでいたりすることがあります。薬の効果や副作用を考慮し、できる限り正しい服用時間を守って服用していただきたいです。ただし、いつ飲んでも良い薬もあり、同じ服用時間でもその意義が全く異なる場合もあります。

(1)起床時:起きてすぐに薬を飲むことです。骨粗しょう症の一部の薬などが該当します。
【服用意義】
・胃の中が空の状態で他の影響を受けない
・再度横になり、飲んだ薬が途中で止まることを防ぐ

(2)食前:食事のおおよそ30分前を指します。5〜10分程度の前後は許容範囲ですが、目安は30分前です。胃の中で薬と食事が混ざる状態を避けるためであり、30分以内という指示ではありません。
【服用意義】
・食事の影響を受けないようにする
 ・効果が増強または減弱するのを防ぐ
 ・副作用が増強するのを防ぐ
・食事前に飲むことで、食事の時間や食後に胃腸を活発にさせる

(3)食後:食後30分以内のことを指します。いつ飲んでもいいですが、忘れないように食後と指示されている薬も多くあります。
【服用意義】
・食べ物により胃の刺激を軽減させる
・食事に含まれる脂肪により吸収されやすくする
・習慣化しやすく、飲み忘れを減らしやすい

(4)食間:食事と食事の間を指し、およそ食事前後2時間以上を指します。食事の最中と混同されることがありますが、全く異なります。
【服用意義】
・食事の影響を最小限にする

(5)食直前・食直後:おおよそ食事前から5分以内、食事後から5分以内を指します。
【服用意義】
・薬の効果を食事の時間と合わせて最大限に引き出す
・それ以外の服用時間では効果がほぼ出ず、副作用のリスクだけが残る

※添付文書とは異なる服用時間が効果的な例
PPIタケプロン(ランソプラゾール)、ネキシウム(エソメプラゾール)など
PPIは胃酸分泌を強力に抑える胃薬です。通常1日1回と記載されており、添付文書上の服用時間の指定はなく、処方せんでは大体食後指示です。しかし、胃酸分泌のピークとPPI血中濃度のピークを合わせることで、最もPPIの効果を引き出すことができるため、食事の30分から60分前の服用が効果的となります。

チラーヂンSレボチロキシン
レボチロキシン甲状腺ホルモンを補うための薬です。こちらも1日1回で指定はなく、日本では食後服用が一般的です。しかし、レボチロキシンは食事と同時に摂取すると吸収がかなり阻害されます。食事の内容によって吸収率が変わるため、単独で他の影響を受けない寝る前などが良いとされています。

これらはほんの一例に過ぎません。まだ多くの薬にはこのような事例があります。ただし、医師は処方せんの指示通りに服用することを前提に治療や薬の選択を行っています。服用方法を変更したい場合は、必ず医師と相談して決めましょう。

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3.飲み方のポイント

(1)コップ一杯の水で飲む
大体の薬は水に溶けやすいように設計されています。そのため、唾液だけで飲んだり少量の水で飲むと、薬が溶けにくくなり吸収が遅れたり、溶けるのが不十分になることがあります。また、消化管の途中で引っかかり、潰瘍を引き起こすことを防止する役割もあります。

(2)避けるべき飲料水
濃いコーヒーやお茶(高濃度のカテキンが含まれるため)、牛乳、アルコール、グレープフルーツジュースなどは特に影響が出やすいです。また、ミネラルウォーターでも硬水にはミネラルが多く含まれ、薬の吸収に影響が出やすい場合があります。高脂肪の飲料も薬の吸収に影響を与えることがあります。

(3)各剤型のポイント
a.カプセル剤
カプセルはその形状と大きさにより、飲みづらい剤型の一つです。まず、口に水などを含んで潤すことがポイントです。また、軽く下を向いて飲むことをお勧めします。上向きだと、気道が空き誤嚥の可能性があり、かつカプセルは水に浮くため飲みにくくなります。顎を少し引いてゴックンと飲むと、意外と飲みやすくなります。

b.散剤
①少量の水に溶かす方法
特にドライシロップや溶けやすい粉薬の場合におすすめです。しっかり溶かして、口内に残らないように残りの水で最後まで飲み切りましょう。
②口内に水を溜めて落とし込む方法
私が一番推奨する方法です。やや上向きで口内に少量の水を溜め、そこに薬を入れてすぐに残りの水で流し込むやり方です。直接薬を入れる方法と比較して、口内に薬が張り付かず、苦味などの風味がかなり軽減される利点があります。
粉薬を直接口の中に入れて飲む方がおられますが、口の中に広がりへばりついてかなり飲みづらいかと思われます。
③補助的なものを使用する方法
オブラートや補助ゼリーなど、市販の製品を利用して飲みやすくする方法です。
c.オブラート
オブラートも、正しい飲み方を知らない方が多いです。正しく飲めば、どんなに苦い粉薬でもスルッと飲み込めます。量が多い時は複数回に分けましょう。コツは、適量の薬を包んだ後に一瞬水につけることです。これをしないと、オブラート自体が口内に張り付いて逆に飲みづらくなります。

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4.特殊な服用法である剤型

(1)舌下錠
舌の下に入れて、口腔粘膜から溶かして吸収されます。かんだり飲み込んだりしてはいけません。主に急いで効果を得たい時、例えば狭心症の薬であるニトロペンがそれに該当します。

(2)徐放錠
薬の成分が徐々に溶け出すように設計されている薬です。薬の効果を持続させ、飲む回数を減らしたり、毒性を減らすこともできます。徐放剤も噛み砕いたりすることで、体内に有効成分が急激に溶け込み、効きすぎたり副作用が多く出たりなど弊害がでる恐れもあります。徐放錠の中ででも、薬品名の最後に徐放錠とついていない場合があります。

(3)チュアブル錠
口内で噛み砕いて服用する錠剤をいいます。噛み砕くことで、錠剤が苦手な小児にも飲みやすく設計されています。また水なしでも飲めたり、時間はややかかりますが口内で溶かして飲んでも良いとされています。そのまま飲み込んでも消化管で溶けはしますが、吸収が遅れる可能性があるためしっかり噛み砕くことが推奨されます。

(4)口内崩壊錠(OD、D、RM錠)
口内で水がない状態でも、素早く溶けて飲むことのできるタイプの錠剤です。普通の錠剤やカプセル剤を飲み込むことが苦手な方や、ひどい頭痛や吐き気などで水が飲み込めない方に特に推奨されます。注意点として、誤嚥や薬が途中で止まるのを防ぐため、寝たままの状態で水なしでは飲めません。また溶けやすいため、開封後長時間放置したり、濡れた手で触らないようにしましょう。

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5.正しい薬の服用法のQ & A

Q1.外出時に薬を飲みたい場合はどうするの?
A1.外で薬を飲む場合は、まず水を手に入れることを最優先してください。どうしても水が手に入らない場合は、唾液をある程度溜めて薬を飲むこともできます。ただし、多めの水で飲まなくてはいけないものは服用を避け、舌の上で溶かさないように注意しましょう。また、特定の薬は水なしでの服用を推奨しないものもあるため、事前に薬剤師に相談しておくことが大切です。外出時には、小さなペットボトルなどの持ち歩き用の水を準備しておくと安心です。

Q2.薬がどうしても飲めない。噛み砕いて潰したり、カプセルから外して飲んでいい?
A2.基本的にはそのままの状態で飲むのが理想です。砕いたりすることで、吸収しにくくなり効果に問題が出たり、胃が荒れやすくなる他、大きな危険性を増すこともあります。まず、薬をもらうときに相談し、自分の飲みやすい剤型に変更してもらいましょう。中には砕いたり脱カプセルしても問題がない薬もあるため、その薬がそれに適しているかを必ず薬剤師に確認しましょう。どうしても無理そうならば、別の類似作用の薬で飲みやすいものもあるかもしれないので、気軽に薬局で相談してください。

Q3.いつも食後服用を忘れてしまう。どうしたらいい?
A3.あらかじめ食卓に出しておくことが理想です。また外食が多い場合は、必ず財布かスマホケースに数回分入れておきましょう。それでも忘れることがあるなら、食後指示の薬であっても、食後以外に飲んでも問題ないものも少なくないため、薬剤師に相談して適切な服用方法を確認しましょう。

Q4.食後には必ずお茶を飲むからそれでどうしても飲みたいんだけど?
A4.できれば水道水や白湯で飲むのが一番です。ただし、お茶はそこまで影響がないため、お茶でなら毎日しっかり飲める、または外出時お茶だけは持ち歩くというならば、それでも良いでしょう。ただし、あまり濃いお茶は「タンニン」という成分が薬に影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。

Q5.漢方薬は出すところによって飲み方が違うんだけど、どれが正しいの?
A5.漢方薬は添付文書上では食前または食間となっており、多くの医療機関ではこのように処方されます。ただし、一部の病院では食後に出されることもあります。漢方薬を空腹時に飲む方が良い理由は、食べ物の影響を受けない方が安定して小腸から吸収されやすいからです。また、胃の中のpHが低い(酸性度が高い)と、吸収が大きくなりすぎて副作用が出やすくなるためです。麻黄や附子が入っている漢方薬以外のものは、副作用のリスクが低いため、多少の吸収の変動は問題ないため、服用間隔さえ開ければ気付いた時の服用で大丈夫です。
※詳しくは、同ブログのNo01漢方薬は食前か食間に飲むもの?漢方のホントウが分かる素朴なギモンを参照してください。

Q6.1日2回や3回飲む薬だと、どうしても忘れてしまうけどどうしたら良い?
A6.1日2回の薬は6時間以上、3回の薬は4時間以上間隔をあけるのが目安となります。ただし、本当に中には異なるものもあるため、自分が飲む薬については確認をとっておくことが重要です。また、最近は同じ成分でも、効果が長く1日1回で済む薬も出ているため、医師や薬剤師と相談して変えてもらっても良いでしょう。

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6.薬の正しい服用法のまとめ

  • 薬を正しく服用することは、効果を適正化し、副作用を出来る限り抑え、かつ治療を効率化するためにとても重要なことである。
  • 薬の服用時間は、起床時なら起床したすぐ後、食前なら食事の約30分前、食後なら食事の30分以内、食間なら食事と食事の間で約2時間前後あけて、食直前および食直後は各々食事のおおよそ5分前および5分後、を意味している。
  • 薬は食後服用を指示されることがほとんどであるが、効果や副作用などの問題でなく、飲み忘れを防ぐためで忘れたら気付いた時に飲んでも良い薬は意外と多い。
  • 薬をコップ一杯の水で飲むことにはしっかりとした意義があり、しっかり溶かし速やかに吸収させたり、途中で引っ掛かるのを防ぐためである。
  • 飲む飲料水は理想は水道水や白湯であり、お茶でも可能である。ただし、アルコール類、グレープフルーツジュース、牛乳、濃いお茶やコーヒーは影響を受けやすいので避けることが推奨される。
  • 飲みにくい剤型の飲み方として、カプセル剤は口を少し湿らせてから飲むときはあごを少し引いて飲むこと。粉薬は口に少し水を溜め、その上に薬を入れてからしっかり水で流し込むこと。また、オブラートや服用補助ゼリーも有効。オブラートは包んだ後、一瞬水につけて体と飲みやすくなる。
  • 特殊剤型の薬もいくつかあり、舌下錠は舌の下で溶かし切り、飲み込まないこと。徐放錠は、効果の持続と副作用軽減させるため、噛んだり砕いて飲まないこと。チュアブル錠は錠剤が飲み込めない小児や高齢者に適しており、しっかり噛み砕いてから飲み込むこと。口腔内崩壊錠は、口の中で溶かし水なしでも飲むことができるが、水なしの場合は寝て服用はしないこと。

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