spect1975のブログ

門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

何とかしたい毎年ツラい花粉症。これが花粉症薬の決定版!!

No.6 春にとてもひどくなる花粉症。どんな対策していいか分からないから教えて!

花粉症は日本国内で最も一般的なアレルギー疾患の一つであり、その発症者数は今も増加の一途をたどっています。全国疫学調査では、1998年から20年で倍以上の有病率になったというデータも出ています。もう国民病と言っていいかもしれません。

早い方では2月頃から症状が現れ、目のかゆみや鼻づまりなど、日常生活に支障をきたす症状を抱える人々が少なくありません。このように広く見られる疾患でありながら、適切な治療を受けていない人が多いのが実情です。そこで、正しい知識を身につけ、日常生活でも症状を軽減できるよう努めていきましょう。

目次

1. 花粉症はそもそもなぜ起こるの?(花粉症の発症原因についての説明)

2. 花粉症発症率はどの地域が高いの?(花粉症の出やすい・出にくい地域の説明)

3. 花粉症はどんな症状が出やすいの?(花粉症の三大主徴、他の症状について説明)

4. 花粉症を予防するにはどうしたら良いの?(予防法についての説明)

5. 花粉症にはどんな薬があるの?(内服・点鼻・目薬についての説明)

6. 花粉症を完治させる薬があるって本当?(根治療法とその薬についての説明)

7. 花粉症についてのまとめ

 

1. 花粉症はそもそも何で起こるの?

花粉症の発症メカニズムは、免疫系の過剰反応によるものです。通常、ヒトの免疫系は体内に侵入した異物や病原体を検知し、それらを排除するために働きます。花粉症の場合、花粉などのアレルゲンが体内に侵入すると、免疫系がこれを異物と認識して反応を引き起こします。この反応により、特定の抗体(IgE抗体)が生成されます。

初回の接触でIgE抗体が生成され、再び同じアレルゲンに触れた際に、これらの抗体が過剰に反応し、炎症や症状を引き起こします。くしゃみや鼻水などの症状は、体が異物を排除しようとする自然な反応ですが、花粉症の場合は過剰な反応が起こります。

花粉症の症状が悪化すると、鼻づまりや目のかゆみ、皮膚のかゆみなどが現れ、日常生活にも大きな影響を及ぼします。このように、免疫系の過剰反応が花粉症の症状を引き起こす仕組みとなっています。

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2. 花粉症発症率はどの地域が高いの?

日本で圧倒的に花粉量が多いのは、スギ、ヒノキの花粉になります。これらが多い中部地方や、コンクリートが多く花粉が散乱しやすい関東地方発症率が高いです。逆に、北海道沖縄はスギやヒノキが極端に少ないため、飛散している花粉量も少なく花粉症患者もかなり少ないです、毎年ツラい花粉症に悩まされている方は、移住を考慮に入れて良いかもしれませんね。

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3. 花粉症はどんな症状が出やすいの?

花粉症の典型的な症状には、鼻水くしゃみ鼻づまりがよく見られます。これらは一般に「三大症状」と呼ばれています。花粉が体内に入ると、アレルギー反応が始まり、最初にヒスタミンという物質が生成されます。この物質によって、鼻水やくしゃみなどの症状が引き起こされます。その後、しばらくするとロイコトリエンという物質が生成され、これが血管を刺激して鼻づまりを引き起こす原因となります。

花粉症が引き起こす影響は、単に目や鼻の症状だけではありません。日常生活における花粉症の影響に関するアンケート結果では、仕事や勉強家事などへの支障が最も多く報告されています。また、思考力や集中力の低下も頻繁に挙げられています。さらに、疲労感や倦怠感、うつ症状などの精神的な影響もあります。

これらの影響は、とても厄介なことに本人が自覚しないうちに現れることがあります。しかし、これらの影響を認識していれば、適切な対策や治療を行うことができるかもしれません。つまり、花粉症が日常生活に与える悪影響を理解することは、適切な対処法を見つける上で重要です。

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4. 花粉症を予防するにはどうしたら良いの?

花粉症を予防する最も効果的な方法は、体内に花粉を入れないことです。そのために最も有効な手段は、マスクの着用です。外出時にマスクを着用するかしないかで、鼻腔内に侵入する花粉の量が大きく変わることが報告されています。

さらに、他の予防方法としては、メガネの装着うがいや洗顔帰宅後の服の清掃、部屋の掃除などの基本的な衛生習慣を実践することが挙げられます。これらの対策を行うことで、体内に入る花粉の量をかなり減らすことができます。

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5. 花粉症にはどんな薬があるの?

【花粉症の薬の目次】

A. 内服薬
●抗ヒスタミン内服薬

●抗ヒスタミン剤とステロイド剤の配合内服薬

●抗ロイコトリエン内服薬
  

B. 外用薬
点鼻薬
●抗ヒスタミン、抗アレルギー点鼻薬
●ステロイド点鼻薬
●血管収縮剤 
⑵点眼薬
●抗ヒスタミン、抗アレルギー点眼薬
●ステロイド点眼薬
●免疫抑制目薬 

【薬の説明】
A. 内服薬

●抗ヒスタミン内服薬
第一に、花粉症の主要な原因は、前述した通りヒスタミンです。ヒスタミンは主に鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどを引き起こし、そのために抗ヒスタミン薬が治療に用いられます。抗ヒスタミン薬には、内服薬、点鼻薬、目薬など、症状に応じてさまざまな形態があります。ただし、抗ヒスタミン薬には眠気ふらつき集中力低下などの副作用があり、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
以下のものがよく処方される抗ヒスタミン薬です。・医療用医薬品の先発品名(一般名):市販薬名の順で記載しています。

また、以下の薬において1日1回タイプのものにアンダーラインを引いておきます。
⑴眠気のほとんど出ないタイプ(添付文書に運転注意の記載なし)。
・アレグラ(フェキソフェナジン):アレグラFX、アレルビ、ケアビエン、フェキソフェナジンα、AG、STなど
クラリチン(ロラタジン):クラリチンEX、ロラタジンAG、RXなど
デザレックス(デスロラタジン)、ビラノア(ビラスチン):該当なし
⑵眠気が比較的出にくいタイプ
アレジオン(エピナスチン):アレジオン20、エピナスチンRX、ナブルシオン20など
・ タリオン(ベポタスチン):タリオンAR
エバステルエバスチン):エバステルAL(現在生産終了)
⑶やや眠気を引き起こしやすいタイプ
ジルテック(セチリジン):新コンタック鼻Z、ストラリニZジェル
・ザイザル(レボセチリジン)、ルパフィン(ルパタジン):ともに該当なし
このタイプは車の運転などにはかなり注意が必要です。個人差があり何も感じない方もいますが、私は久しぶりに飲むと、翌日1日中寝てなくてはいけないほど眠気が出ることもあります。

よく患者さんから質問があったのは、どの抗ヒスタミン薬が強いのか?でした。その回答としては、どれも効果や副作用には個体差があり、一概にどれが強いものかは人それぞれ、が正解だと思います。よって、1ヶ月程度などある期間継続し、比較してみて一番良いと思ったものを服用することが一番です。

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抗ヒスタミン剤ステロイド剤の配合内服薬
ヒスタミン薬では効果が現れるまでに時間がかかる場合や、症状が深刻な時には効果が不十分なことがあります。このような場合に対応できるのが、抗ヒスタミン薬とステロイド剤が配合された薬です。ただし、ステロイド内服剤には免疫低下などの全身性のものや、消化性潰瘍など多くの副作用があります。そのため、基本的には症状が非常にひどい場合にのみ使用し、かつ、医師の指示に従って正しく使用する必要があります。
市販薬はなく医療用医薬品として処方箋でのみ手に入り、すべて同一成分で、セレスタミン、サクコルチン、エンペラシンなどの薬があります。

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●抗ロイコトリエン薬
もう一つの主要な症状である鼻づまりの原因は、前述の通りロイコトリエンという物質になります。したがって、抗ヒスタミン薬だけでは不十分です。多くの場合、症状が重なることがありますので、抗ロイコトリエン薬と抗ヒスタミン薬を併用することで効果が高まります。また喘息を併発されている方には特に推奨されています。抗ロイコトリエン薬は市販されておらず、処方箋が必要です。代表的なものには、キプレスやシングレア(モンテルカスト)、オノン(プランルカスト)などがあります。

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B. 外用薬
点鼻薬
点鼻薬には主に3種類あります。それぞれの種類によって異なる効果がありますので、症状や程度に応じて適切な点鼻薬を選びましょう。

●抗ヒスタミン、抗アレルギー点鼻薬
これらは内服薬に使用されている成分を、点鼻薬として利用したものです。即効性はやや高いですが、効果としてはやや弱いため、軽度の症状に適しています。以前は主流でしたが、ステロイド点鼻薬が登場して以降は補助的な役割となっています。
ヒスタミン薬の処方薬としては、ザジテン点鼻液(ケトチフェン)、レボスチン点鼻液(レボカバスチン)、抗アレルギー薬としてはクロモグリク酸点鼻液があります。市販薬は以前は存在しましたが、現在では調査した限りでは見当たりません(他の成分と混合された市販薬は多数ありますが、ここでは挙げる意味がないため省略します)。

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ステロイド点鼻薬
現在の主流となっている点鼻薬で、耳鼻科などで数多く処方されます。軽度な症状から毎日定期的に使用することで、ピーク時期の悪化を抑えることができます。鼻水、くしゃみ、鼻づまりの3大症状を抑える効果があります。

ステロイド点鼻薬にはいくつかの誤解があります。まず、副作用に関するものです。薬の成分は主に患部に効果を発揮し、ほとんど体内に吸収されません。したがって、副作用は局所的なものであり、免疫抑制や消化性潰瘍などはほとんど心配ありません。

また、即効性に関しても誤解があります。ステロイドは強力なイメージがありますが、点鼻薬には即効性がありません。したがって、一度使用してもすぐに効果を感じることはありません。1日1回の使用で済む便利な製品もありますので、毎年鼻づまりなどに悩まされる方は、安定して症状が落ち着くまでは継続することをお勧めします。

医療用医薬品としては、アラミスト点鼻液(フルチカゾンフランカルボン酸)ナゾネックス点鼻液(モメタゾンフランカルボン酸)エリザス点微粉末(デキサメタゾンシペシル酸)フルナーゼ点鼻液(フルチカゾンプロピオン酸)などがあります。

市販薬では、エージーアレルカットEXc、ナザールαAR、パブロン鼻炎アタックJL、フルナーゼ点鼻液などがあります。使い勝手からすると、1日1回の医療用医薬品がオススメです。

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●血管収縮剤
このタイプは以下のものが主要な点鼻薬製品です。
以下、・医療用医薬品の先発品名(一般名):市販薬名として記載しています。
・プリビナ液(ナファゾリン):アルガード ST鼻炎スプレー、スットノーズαプラス点鼻薬、タイヨー鼻炎スプレーAG、ナザールスプレー、ビタトレール 鼻炎スプレーなど
・コールタイジン点鼻液(塩酸テトラヒドロゾリン):コールタイジン点鼻薬
・該当なし(オキシメタゾリン):ナシビンMスプレー
(注意)これらのほとんどは抗ヒスタミン剤や他成分とも配合されていますが、事実上血管収縮薬としてみてください。

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⑵点眼薬
目薬もその目的に応じて主に3種類があります。またコンタクト装着時も、その種類によりとても注意すべき点があるため、以下を参照してください。

●抗ヒスタミン、抗アレルギー点眼薬
目薬の抗ヒスタミン薬も内服と同様に、即効性はありません。したがって、症状がひどい場合は、花粉症の流行前からの使用がおすすめです。
主流な医療用医薬品としては、抗ヒスタミン剤としてアレジオン点眼液(エピナスチン)、その使用頻度を減らしたアレジオンLX点眼液、パタノール点眼液(オロパタジン)、リボスチン点眼液(レボカバスチン)があります。補助的な抗アレルギー剤として、インタール点眼液(クロモグリク酸Na)、アレギサール(ペミロラストK)点眼液なども利用されます。

【コンタクト装着時の目薬使用上の注意】ソフトコンタクトレンズを普段ご使用の際に、目薬を使用する際には、注意が必要です。目薬には通常、防腐剤が含まれており、主に塩化ベンザルコニウムという成分が使われています。この防腐剤はソフトコンタクトレンズに吸着しやすく、直接目に付着すると目を傷つける可能性があります。また、コンタクトレンズそのものに変形や変色を引き起こす可能性もあります。したがって、目薬を使用する際には、必ずコンタクトレンズを外してから行うようにしてください。なお、カラーコンタクトレンズに関しては特に注意が必要です。

一方、ハードコンタクトレンズワンデーコンタクトレンズに関しては、一般的に問題ありませんが、酸素透過性の高いコンタクトレンズについては外した方が良いとされています。

そこで医用用医薬品の中で現在唯一塩化ベンザルコニウムが入っていない、アレジオン点眼液(LX含む)がとても有用です。これから眼科にかかる方は、医師と相談して本剤を処方してもらうと良いと思います。

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ステロイド点眼薬

ステロイドの目薬は、即効性が非常に高く、よく用いられる薬です。しかし、目に使用するため、副作用が問題になることがあります。特に代表的な副作用として、眼圧上昇が挙げられます。無闇な長期使用は、ステロイド緑内障と呼ばれる元に戻りにくい状態を引き起こす可能性があります。そのため、医師や薬剤師の指示に従い、悪化時に限定して使用することが重要です。

市販薬としては販売されていませんが、医療用医薬品として、フルメトロン点眼薬やオドメール点眼薬(フルオロメトロン)などがあります。

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●免疫抑制目薬

昔は春季カタルなどの重症例には、ステロイド点眼薬を使用する必要がありました。しかし、近年、元々内服薬として存在していた成分が点眼薬として開発され、現在では2種類の目薬が処方されています。これにより、ステロイド点眼薬の最大の懸念であった眼圧上昇を気にせずに使用できるようになりました。ただし、重症度によっては、ステロイド点眼薬も併用することがあります。

免疫抑制剤は副作用が気になるところですが、使用が局所的であるため、全身的な副作用はほとんど心配する必要はありません。ただし、目の感染症には十分な注意が必要です。

医療用医薬品として、パピロックミニ点眼液(シクロスポリン)やタリムス点眼液(タクロリムス)の2種類があります。特にタリムス点眼液は効果が強力であり、効果の発現も早く、重症例やステロイド点眼薬で効果が得られない場合にも有用とされています。

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6. 花粉症を完治させる薬があるって本当?

これまで紹介した薬は、すべて症状の軽減や管理に焦点を当てた対症療法であり、長期間の使用が必要です。しかし、スギ花粉に限定されますが、舌下免疫療法が開発されました。これは減感作療法で、簡単に言えば、少量のアレルゲンを体内に摂取し、体内でアレルゲンを徐々に慣れさせていくものです。これは従来の治療法とは全く異なります。

この治療は花粉症の流行期間中に行うと悪化する可能性があるため、その期間を避けて6〜12月の間に行います。通常、3〜5年の間継続され、即効性を期待するものではありません。効果としては、2割が完治し、6割が症状の改善を実感し、残りの2割は効果が見られないとされています。この治療法は、鼻づまりだけでなく、目のかゆみや集中力低下など、花粉症が引き起こすあらゆる症状に効果があります。また、治療終了後も薬物使用量を長期間にわたり減らすことが期待されます。

この治療法も市販されておらず、処方箋が必要です。現在、シダキュアシダトレンの2種類が存在します。

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7. 花粉症対策のまとめ!

・花粉症患者は20年で倍以上になり、現在も増加中である

・花粉症は鼻水、くしゃみ、鼻づまりが主症状も、他日常生活にも悪影響がある

・予防はマスクが第一、他なるべく清潔にして花粉を体内に取り込まないこと

・内服は抗アレルギー薬が基本、即効性はないため予防的に早めに始めることが重要

・スギ花粉に対しては免疫療法もあり、正しい服用で2割が完治、6割は症状の改善あり

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現代は日本人の3〜4人に1人は花粉症になる時代です。市販でも処方箋による医薬品もあふれかえっており、どれがが良いのかその特徴がどうなのか分かりにくいですよね。これらを読めば一気に解決できるでしょう。また根治を目指す免疫療法も出ています。また新しい薬があればどんどん更新していくので、流行期になったらまたブログを読みにきてくださいね。