spect1975のブログ

門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

夢のような痩せ薬⁉️「ウゴービ」を徹底解説‼️

No.5 新しい痩せ薬が出ると聞いたんだけど、どんなものか詳しく知りたい!!

 

最近、市場に新しく登場する「ウゴービ」は、多くの人々の関心を集め、ニュースでも話題になっていますね。一般的な市販のダイエット製品とは異なり、ウゴービは基本的には処方箋が必要な医薬品です。そのため、多くの人が効果や安全性について疑問を抱くかもしれません。特に女性にとって、体重の増減は永遠の悩みであり、これに関連した製品には慎重になる必要があります。今回は、この新薬「ウゴービ」について詳しく解説していきます。※発売日は2024年2月22日となっています。

 

目次

1. このやせ薬は誰でも出してもらえるの?

2. ウゴービにはどのような作用があるの?

3. ではどのくらい効果はあるの?

4. ウゴービって注射なんだけど、どうやって使うの?

5. やっぱりよく効く薬だし、新薬だから高い?

6. ウゴービの使用を控えた方が良い人は?

7. ウゴービを打てば誰でもやせられるの?

8. ウゴービにはどんな副作用があるの?

9. 注射を中止したら、リバウンドしてしまう?

10. ウゴービについてのまとめ

 

1. このやせ薬は誰でも出してもらえるの?

結論から言うと、処方薬としては「ウゴービ」は、あくまで過剰な肥満の治療薬であり、美容目的での処方は残念ながらできません。一方、自由診療であれば受けることはできるようです。ただし、本薬の乱用を防ぐために、施設基準など厳しいようで、まだ自由診療すらも数が少なく困難かもしれません。それでも、危険性も少なくないため、医師の監修のもと、正しい使用をしなくてはいけません。

処方薬としての対象者は、高度の肥満症(35kg/㎡以上)か、高血圧など2種以上の合併症を持つ肥満症(27kg/㎡以上)の方のみで、厳しい審査が必要です。

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2. ウゴービにはどのような作用があるの?

そもそもこの薬と同じ成分の製品は、糖尿病の薬として以前から存在していました。オゼンピック注射薬やリベルサス内服薬がそれにあたり、体内で分解されないようにして、改良されたものがウゴービになります。

この薬の作用の本元としては、GLP-1という受容体を刺激するものです。GLP-1とは別名やせホルモンとも言われ、血糖値のコントロール食欲減退および満腹感を亢進させることができます。また、基礎代謝を上げる作用もあるようです。

 

ウゴービ(セマグルチド)は、特に膵臓のβ細胞上にあるGLP-1受容体に結合します。そして、主に食後など血糖上昇時にインスリンの分泌を増やし、逆にグルカゴンの分泌を抑制します。また、この薬はアルブミンと結合して代謝が遅れ、腎臓での除去が少なくなるため効果が持続します。DPP-4という酵素に対する抵抗性も示し、その結果、食欲を減退させ、満腹感を増加させ、食べ物の胃での滞留を促すことで体重の増加を抑制します。

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3. ではどのくらい効果はあるの?

専門医の元で食事制限と合わせれば、週1回の使用を約1年3〜4ヶ月継続することで、平均15%ほどの減量が示されています。あれ、なんか言うほど効いていないのでは?と思った人もいるかもしれません。現在日本で発売されているサノレックスという薬がありますが、それと比較しても効果は抜群であると言えます。またサノレックスは、その危険性の疑いから最大3ヶ月の制限もあります。

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4. ウゴービって注射なんだけど、どうやって使うの?

ウゴービは皮下注射で、毎回の使用部位を2〜3cm離して、上腕部、腹部、大腿部のどこかに注射します。これは皮膚の硬化を防ぐためのものです。

週に1回の使用なので、忘れにくいです。定期的な曜日に注射するのが良いでしょう。もし定期的な曜日に忘れた場合は、次回の注射予定日との間が2日以上あれば、すぐに注射してください。次回の注射予定日から2日以内に2回注射することや、1回で2回分の量を注射することは非常に危険ですので、絶対に行わないようにしましょう。

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5. やっぱりよく効く薬だし、新薬だから高い?

この点に関して、理解が難しいかもしれませんね。基本的には、ウゴービは短期間ではなく、長期的に使用される薬です。そのため、経済的な負担も懸念されるでしょう。言い換えると、処方箋で入手できる場合はなんとか負担が軽減されますが、自由診療ではかなりの負担がかかる可能性があります。以下に、ウゴービの通常の使用量と価格を示しますが、保険適用の場合、通常は3割負担ですので、薬価の30%に加えて、診療料や薬局での調剤費用などもかかります。

通常用量:0.25mg×4回→0.5mg×4回→1.0mg×4回→1.7mg×4回→2.5mg(継続)

前述の通り、基本的に週に1回の注射が必要なため、最初は0.25mgから始め、4週間ごとに増量し、最終的に2.5mgで維持されることになります。

用量/薬価(3割ベース/1ヶ月ベース(4週間分))

0.25mg/1,876円(約563円/約2,501円)

0.5mg/3,201円(約960円/4,268円)

1.0mg/5,912円(約1,774円/約7,094円)

1,7mg/7,903円(約2,371円/約9,484円)

2.5mg/10,740円(3,222円/12,888円)

最終的には2.5mgを維持するため、保険適用の場合、月額は約1.5千円程度になるかもしれません。自由診療の場合、薬価の100%に加えて、価格を調整する余地がありますので、月額は何万円にもなる可能性があります。

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6. ウゴービの使用を控えた方が良い人は?

ウゴービの使用の際の適応にあっていても、使用が推奨されない方もいます。

1. 妊娠中または妊娠の可能性のある方: 動物実験において妊娠中の使用により、胎児毒性が認められた報告があります。妊娠の可能性がある場合は、医師に相談しましょう。

2. 15歳未満の小児: ウゴービ注の安全性と効果に関する臨床試験は、この年齢グループに対しては行われていません。そのため、小児への使用は推奨されません。

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7. ウゴービを打てば誰でもやせられるの?

ウゴービを使用すれば誰でも痩せることができるのかという点については、断言することはできません。外国や日本での研究では、肥満症に対するウゴービの効果が示されていますが、これは専門の医師の指導のもとで、適切な食事や運動療法と組み合わせて行われた場合の効果です。

食事や運動療法なしにウゴービだけを頼りにしても、効果を得ることは難しいでしょう。実際、運動を行わずに栄養の偏ったファストフードばかりを摂取し続けると、ウゴービの効果が得られないだけでなく、使用中止後にリバウンドを起こしやすくなったり、別の健康問題が発生する可能性もあります。ただし、なかなか自分の意思で食事制限をすることは難しいですよね。

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8. ウゴービにはどんな副作用があるの?

それほどの効果がある薬ならば、副作用も多くあるのでは?と考えるかもしれません。結論から言えば、適正に使用している限りはそこまで重大な弊害は多くはないです。

それでは、具体的に重大な副作用と、起きやすい副作用について説明します。

重大な副作用としては、

1. 低血糖:脱力感、倦怠感、冷や汗、頭痛、めまいなどが起こることがあります。この  ような症状が出たら、すぐに糖分を摂取しましょう。

前述した通り、本剤は元来糖尿病の薬であり、かつ肥満症の薬とするため最終的には用量を多く投与します。それを考えると低血糖は十分考慮すべき副作用です。ただし、そもそもGLP-1受容体作動薬と呼ばれるものは、他の糖尿病の薬と比較して低血糖が出にくいように設計されています。それでも、他糖尿病薬であるSU薬などと一緒に使用する場合はより注意が必要です。

2. 急性膵炎:嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛など、異常があればすぐ中止しましょう。

 

頻度の高い副作用としては、

食欲不振、吐き気、便秘、下痢、頭痛などが挙げられます。GLP-1は胃からの排泄を遅らせる作用があるので、これも当然の副作用と言えます。これらは日常生活に支障をきたすようであれば、医師と相談して減量や休薬などの対処が必要になります。逆に、軽微な食欲不振であれば、これを境に食事量を継続的に減らしていけると言う手もありますね。

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9. 注射を中止したら、リバウンドしてしまう?

残念ながら、リバウンドに関しては他の薬やダイエットと同様にあるようです。ウゴービを続けてさえいれば、かなり効果は保持できるようですが、基本68週までの使用と決められています。一定の条件下で再開もできますが、やはり最終的には生活習慣の改善が必要なようです。

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10. ウゴービについてのまとめ

●週1回の皮下注で、元々は糖尿病の薬として出されていた薬を改良したもの

●高度の肥満か複数の合併症を伴う肥満など、処方薬としての条件は厳しい

●1年4ヶ月弱ほど継続することにより、平均15%の減量が期待できる

エビデンスがある効果としては、食事や運動療法を組み合わせたものである

●妊婦や2か月以内に妊娠のある可能性のある方、小児は使用を控える

低血糖や急性膵炎などの重大な副作用、食欲不振などの消化器症状がある

●リバウンドは他ダイエット方と同様で、結局は生活習慣の改善が必要

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いかがだったでしょうか?食事療法を併用したり注意すべき副作用もあったりなど、留意すべき点は多々ありますが、今までの肥満薬と比較しても画期的な薬であることは間違いありません。日本ではまだまだ、肥満は自己責任という考えが主流となっています。ただこれだけの生活習慣病につながる方がいる現実がある限り、自分の意思だけでこれらを克服するのはかなり至難ではないでしょうか?

本剤において、まだ日本での絶対的データが足りていません。それに現状ウゴービを提供できる医療機関も相当限られており、かつGLP-1受容体作動薬自体が日本では顕著に不足しています。よって、まだまだ身近に使用できるようになる日は当分先かもしれません。

これから新しいデータが手に入れば、その都度更新していきたいと思います。