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門前薬局で長期勤務歴のある薬剤師です。主には皮膚科関連に強みを持っています

ビタミン剤をホントウに分かって摂ってる?これでビタミン理解度120%!

No8. ビタミン剤

現代の日本では食の欧米化が進み、栄養不足や偏りが増え、それに伴い様々な疾病や体調不良が引き起こされる可能性が高まっています。それを補う上で、サプリメントであるビタミン剤は必須な存在ともなっています。ただ、高価なビタミン剤を購入しても、果たしてそれを十二分に活かせているでしょうか?この記事を読めば各ビタミンのことを詳しく把握でき、どうしたら最大限に活かせる一緒に考えていきましょう。

 

目次

1. そもそもビタミンって何?

2. ビタミンにはどんな種類があるの?

 ⑴ 脂溶性ビタミン

  a. ビタミンA

  b. ビタミンD

  c. ビタミンE

  d. ビタミンK

 ⑵ 水溶性ビタミン

  a. ビタミンB1

  b. ビタミンB2

  c. ビタミンB3(ナイアシン)

  d. ビタミンB5(パントテン酸)

  e. ビタミンB6

  f. ビタミンB7(ビオチン、ビタミンH)

  g. ビタミンB9(葉酸)

  h. ビタミンB12

  i. ビタミンC

3. ビタミン剤って合成のものと天然のものとどちらが良いの?

4. ビタミンって必要摂取量を摂れば十分なの?

5. ビタミンは不足するものだけ取れば効くの?

6. ビタミンについてのまとめ!

 

1. そもそもビタミンって何?

ビタミンという言葉は、日常生活でよく耳にするものの、その正確な意味についてはあまり知られていないかもしれません。

ビタミンは、私たちの体にとって重要な栄養素であり、主に糖質、脂質、タンパク質といった三大栄養素代謝を助ける役割を持ちます。言い換えれば、ビタミンは私たちの体におけるエンジンのオイルのようなものです。車がエンジンオイルなしでは正しく機能しないように、私たちの体もビタミンなしでは適切に機能せず、エネルギーの不足や健康上の問題を引き起こす可能性があります。そのため、ビタミンは体にとって極めて重要な栄養素です。

本来、ビタミンは食事から摂取することが理想的です。しかし、忙しい現代社会ではバランスの取れた食事を毎日摂取することが難しいこともあります。重要なことは各ビタミンの適性をしっかりと理解して、自分に何が不足しているのか?を正しく理解した上で摂取していくことが重要です。

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2. ビタミンにはどんな種類があるの?

ビタミン剤を摂取する際には、各ビタミンがどのような効果を持っているかを理解することが非常に重要です。そして、自分にとって何が不足しているかを把握し、最も適したビタミン剤を選択する必要があります。

ビタミン剤は大きく2種類に分かれており、油に溶ける脂溶性ビタミンと、水に溶ける水溶性ビタミンがあります。これを知っておくだけでも、どのようにして効率よく摂取できるかを理解できます。例えば、脂溶性ビタミンを油と一緒に摂取すると、吸収されやすくなることを知ることができます。

脂溶性ビタミン

脂溶性にはA、D、E、Kの主に4種類があります。脂溶性ビタミンの注意すべき点は、必要以上に摂りすぎると、肝臓や脂肪などに蓄積して過剰症を起こす可能性が出てきます。よってビタミン剤として摂取する場合は特に、上限量を守る必要があります。

a.ビタミンA(レチノール)

ビタミンAには主に2種類存在し、肉や魚、乳製品などに含まれる既成ビタミンAと、果物や野菜などの植物由来のもので、体内で分解や変換されて初めてビタミンとして働くプロビタミンAがあり、代表的なものではβカロテンが存在します。プロビタミンAは、体がビタミンAを不足している量だけを変換し、不必要な場合は脂肪細胞に蓄えられるか排泄されるため、過剰症を起こすことはありません。

【働き】主成分のレチノールは、目や皮膚の粘膜を保護し、免疫力を高める作用があります。特に暗い場所での視力を保つ作用もあります。皮膚に対しては、誘導体であるトレチノインがターンオーバーを早め、しわや色素沈着に効くとされています。

【必要摂取量】成人男性:550〜650μg、成人女性:450〜500μg

【欠乏症】ビタミンA欠乏症の初期段階では、夜間の視力低下である夜盲症が起こります。さらに進行すると、角膜乾燥などが現れ、放置すると失明に至る可能性があります。また、IgGなどが減少し、免疫機能の低下も招きます。

【過剰症】急性のものでは頭痛が特徴的な症状であり、慢性では皮膚の乾燥を含めた皮膚トラブル、脱毛、筋肉痛などが起きます。また、妊娠初期での過剰摂取は、胎児の催奇形性につながる恐れもあるため、上限量も5000IU(1500μg)に設定され、特に注意が必要であると言われています。

【多く摂れる食品】

  • 牛や豚などの動物のレバー(肝臓)
  • うなぎや鮭などの魚類
  • ニンジン、ほうれん草などの緑黄色野菜
  • アボガド、バナナ、メロンなど

【相性の良いもの】

  • 亜鉛:ビタミンAの抗酸化作用をさらに活性化し、老化を招く活性酸素や過酸化脂質を抑えます。これにより、アンチエイジングの効果の期待もできます。
  • ビタミンE:ビタミンAの効果を高めるため、目の働きをよりサポートします。

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b. ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)

ビタミンDは、主に2種類に分類されます。一つは植物由来のもので、キノコなどに含まれるエルゴカルシフェロールと呼ばれるVD2です。もう一つは、魚などの動物性由来であり、コレカルシフェロールと呼ばれるVD3があります。皮膚を太陽の光に当てることで、ビタミンDが生成されると言われていますが、これは主にD3に関連しています。

【働き】一番大きなものとしては、カルシウムの吸収を助け骨の健康を保つことです。他にも、神経伝達や筋肉収縮も助けます。さらには、体内に侵入した細菌やウイルスに対しても、免疫機能を促進したり、最近ではうつ病にも効果があると言われています。

【必要摂取量】成人:600IU/日(71歳以上は800IU)

【欠乏症】ビタミンD欠乏症は、小児期には骨が軟化し変形するくる病として現れ、成人期には骨軟化症として現れ、骨の痛みや筋力の低下を引き起こします。

【過剰症】初期症状としては、吐き気や食欲不振、便秘などの消化器症状が主なものです。さらに悪化すると、不整脈やけいれん、腎障害を起こすこともあります。

【多く摂れる食品】

  • 鮭やイワシ、サンマなどの魚類
  • しいたけ、きくらげなどのキノコ類(日光にある程度晒すとさらにアップ)

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c. ビタミンE(α-トコフェロール)

ビタミンEは、トコフェロールなどの8種類の化合物の総称であり、多くの食品に含まれる栄養素です。その中でも、ヒトの体内で活性が高く主に利用されるのはα-トコフェロールであるため、ビタミンEの量はこの名称で表示されることがあります。

【働き】ビタミンEには抗酸化作用があり、脂質の酸化を抑えて動脈硬化老化を防ぐ効果があります。また、赤血球の破壊を防ぎ、血管を拡張して手足の冷えを改善する役割もあります。さらに、過剰な活性酸素を抑制し、免疫細胞を活性化させることによって免疫力を向上させる役割も果たします。

【1日必要摂取量】乳幼児:3.0〜5.0mg、成人:5.0〜7.0mg

【欠乏症】ビタミンE欠乏症では、神経や筋肉に損傷を与え、手足の感覚喪失や視覚障害などが起こる可能性があります。ひどくなると溶血性貧血も発生しますが、日本を始めとした通常の食事が取れる国では滅多に起こりません。

【過剰症】過剰なビタミンE摂取により、α-トコフェロールが骨を壊す破骨細胞の巨大化に関与し、骨粗鬆症が引き起こされる恐れがあります。ただし、ビタミンEは通常摂取した2/3は便として排出されるため、通常の食事からの摂取では過剰症はまず起こりません。過剰なビタミンE摂取は、相当量のビタミン剤を摂取した際に起こり得ることがあります。

【多く摂れる食品】

  • 煎茶(非常に多い)
  • アーモンドやくるみなどの豆類
  • ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
  • ひまわり油やオリーブオイルなどの油類

【併用すると良いもの】

  • ビタミンC:抗酸化作用を持つα-トコフェロールが酸化されて活性を失ったものをビタミンCにより元の還元体へと戻す作用があります。

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d. ビタミンK(K1:フィロキノン、K2:メナキノン類)

ビタミンKは脂溶性のビタミンで、植物性のK1と生体内で動物性食品に多く主に利用されるK2とがあります。熱に強い性質を持つため、料理では油で炒めたりすると吸収効率が上がります。ただし、紫外線には不安定です。また、生体の需要を満たすほどではないですが、腸内細菌でも産生されます。

【働き】

  • 血液凝固の促進:血液凝固に関するプロトロンビンの補酵素となります。
  • 骨形成の促進:カルシウムの吸収や運搬を活性化します。
  • 動脈の石灰化予防:石灰化を促進するコラーゲンの生成を抑制します。

【1日必要摂取量】成人:150μg

【欠乏症】ビタミンK欠乏症では、血液凝固に関与するため、皮膚や鼻、胃などの消化器からの出血が起こります。ただし、通常は腸内細菌によりメナキノンが産生されるため、欠乏症はまず起こりづらいと言えます。ただし、継続的な抗生物質の服用はメナキノンの産生を低下させ、ビタミンKの利用効率を減少させる可能性があります。

【過剰症】ビタミンKの過剰摂取は健康被害が見られないため、上限摂取量は設けられていません。通常の食事からの摂取では問題はありません。

【多く摂れる食品】

  • ブロッコリー、ほうれん草、モロヘイヤなどの緑黄色野菜
  • わかめ、海苔などの海藻類
  • 納豆

【摂取上の注意点】ビタミンKは病院や薬局などで、血液をサラサラにする薬と一緒に摂ってはいけないと言われています。ただし、その中でもワーファリンという薬のみが関連します。ワーファリンはビタミンKが関与する血液凝固を阻害するため、併用すると効果が相殺される可能性があります。他の抗血小板薬や血液凝固阻害剤との併用は問題ありません

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⑵ 水溶性ビタミン

脂溶性と反対に水に溶けやすい性質を持ち、ビタミンB群の8種類とビタミンCの計9種類が存在します。その性質から、過剰に摂ったとしてもその分は尿に溶けて排出されます。逆にいうと、体に溜め込まないため、毎日摂取する必要があります。

a. ビタミンB1チアミン

ビタミンB1は水溶性のビタミンで、チアミンと呼ばれる栄養素であり、日本で初めて発見されたビタミンと言われています。白色の結晶で、弱酸性には安定していますが、アルカリ性熱には分解されやすい性質を持っています。また、B1はアリシンがあると吸収されやすいため、多く含まれる玉ねぎやニンニクと一緒に摂取すると効率的です。

【働き】ビタミンB1は糖質が体内で分解されてエネルギーに変換される際に補酵素としての役割を果たします。特に日頃から活発に動く方や、糖分を多く摂取する方にとっては特に必要な栄養素です。

【1日必要摂取量】成人:1.1〜1.4mg

【欠乏症】ビタミンB1欠乏症では、糖からのエネルギー変換が不十分になるため、疲労倦怠感を感じやすくなります。長期間にわたるエネルギー不足は、脳や神経系に障害を引き起こす可能性があります。さらに、重症化すると心不全による足先の神経障害や脚気と呼ばれる病態が現れることもあります。これは江戸時代にビタミンB1の非常に多い玄米から、食感や味の良い白米に変えたことで非常に多くの方がかかったことでとても有名なものですね。

【多く摂れる食品

  • 豚肉や主に赤身肉、鮭などの魚類
  • 大豆、アーモンドなどの豆類
  • 玄米や発芽米などの穀類

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b. ビタミンB2リボフラビン

ビタミンB2リボフラビンと呼ばれる、水溶性ビタミンの一種です。調理では水にさらし続けると溶け出してしまうために、煮汁などと一緒であると効率的に摂取できます。

【働き】ビタミンB2は糖質、脂質、タンパク質の代謝やエネルギー産生の補酵素として重要な役割を果たします。特に脂質の代謝に関与し、皮膚、粘膜、爪などの発育を促進します。このため、「発育のビタミン」「美容ビタミン」とも呼ばれます。

【1日必要摂取量】成人:1.2〜1.6mg

【欠乏症】ビタミンB2の欠乏症では、皮膚や粘膜の発育が阻害され、口内炎口角炎、角膜炎などが発生する可能性があります。成長期の子供では成長障害も起こり得ます。

【過剰症】リボフラビンは需要以上の摂取をしても、その吸収率は摂取量が増加するにつれて低下します。そのため、過剰摂取しても吸収されずに尿に排泄されるため、健康障害は報告されていません。

【多く摂取できる食品】

  • 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
  • レバー、ハツなどの内臓類
  • のり、わかめ、ひじきなどの海藻類
  • 納豆、大豆など

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c. ビタミンB3(ナイアシン

ナイアシンは水溶性ビタミンB群の一種で、ニコチン酸とニコチンアミドの総称です。性質としては、中性、酸性、アルカリ性、酸素、光、熱に対して安定しています。そのため、保存や調理によって効力が低下することはほとんどありません

【働き】ナイアシンは全身の500種類もの酵素補酵素として働いています。それにより、糖質、タンパク質、脂質のエネルギー代謝をスムーズにします。また、マクロファージに働きかけ神経保護作用や、脂肪酸ステロイドホルモンの合成も助け、皮膚や粘膜などの健康を維持します。さらには、アルコール分解作用などもあります。

【1日必要摂取量】成人男性:13〜15mgNE、成人女性10〜13mgNE

【欠乏症】ナイアシンの欠乏症は、皮膚や粘膜を正常に維持する働きの不足からくるもので、その主たるものがペラグラと言われるです。それにより、赤い発疹などの皮膚症状、口内炎下痢などの消化器症状、神経障害が出やすくなります。さらに皮膚症状では、光線過敏症が起こることもあります。

【過剰症】ナイアシンは基本的には過剰に摂った分は排泄されるため、問題になることはありません。ただし短期での大量投与により、「ニコチン酸フラッシュ」と呼ばれる症状が出ることがあります。症状としては顔の紅潮やかゆみなどがあげられ、個人差はありますが数時間で治ると言われています。上限量は成人男性が350mgNE、成人女性は250mgNEとされており、マルチビタミン剤の通常量の10倍以上は摂取しないと取れない量になっています。

【多く摂れる食品】

  • カツオやマグロなどの魚類
  • 豚や牛のレバー、鶏の胸肉などの肉類
  • しいたけや舞茸などのキノコ類

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d. ビタミンB5パントテン酸

パントテン酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に属します。かつては酵母の成長に必要な物質として発見され、以前はビタミンB5と呼ばれていましたが、現在ではパントテン酸と呼ばれています。性質としては、水に溶けやすく、酸性やアルカリ性熱に対して不安定です。

【働き】パントテン酸補酵素などの成分として機能し、エネルギー代謝を助けます。特に糖質や脂質の代謝において重要な役割を果たし、善玉コレステロールであるHDLの生成も支援し、動脈硬化を予防します。また、副腎皮質ホルモンの生成にも関与し、ストレス対応の一翼を担うことから、抗ストレスビタミンとも言われています。

【1日必要摂取量】成人:5〜6mg

【欠乏症】パントテン酸の不足により、疲労感や食欲不振といった症状が現れることがあります。また、頭痛や手足の知覚異常、イライラ感、不眠、倦怠感なども報告されています。ただし、腸内細菌でも作られかつ多くの食品に入っていることから、通常の食事では欠乏症はまれです。

【過剰症】パントテン酸の過剰による弊害は、水に溶けやすいという性質から尿に排出されほぼないものとされています。健康被害の報告もなく、上限量も設定されていません。

【多く摂取できる食品】

  • 鶏むね肉、鶏ささみ、鶏や豚および牛レバー
  • うなぎ、ししゃも、タラコなどの魚類や卵
  • えのき、しいたけ、マッシュルームなどのキノコ類
  • 納豆、大豆などの豆類

【摂取上の注意】加工や加熱には弱いので、調理時には工夫が必要です。また、アルコールやカフェインはパントテン酸の吸収を阻害するため、これらを頻繁に摂取する場合は注意が必要にもなります。

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e. ビタミンB6(ビリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)

ビタミンB6には同様の活性を持つ、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの3種類の化合物があります。これらは多くの食品に含まれ、白色の結晶であり、光に分解されやすい性質を持っています。また、ヒトの身体は、代謝に関わる100以上の酵素反応のためにビタミンB6を必要としています。

【働き】ビタミンB6はタンパク質の代謝に関わる補酵素としての役割を担っています。食事で摂ったタンパク質は、アミノ酸に分解され、皮膚や髪の毛、筋肉などの材料として利用されます。また、ビタミンB6は細胞性免疫や体液性免疫の正常な働きの維持、ヘモグロビンなど赤血球合成への関与、脳の働きへの関与、脂質の抗酸化作用などにも関わります。

【1日の必要摂取量】成人男性:1.4mg、成人女性:1.1mg

【欠乏症】ビタミンB6欠乏症では、皮膚や赤血球の生成に関わることから、皮膚炎、舌炎、口内炎、貧血などが起こる可能性があります。さらに、うつ症状や免疫機能の低下なども報告されています。

【過剰症】水溶性ビタミンでは基本的に過剰症がないとされていますが、ビタミンB6の大量摂取時には感覚性ニューロパシーという明確な悪影響があります。これは手足先の感覚が鈍くなることを指します。また症状としては、手足の強い痺れや近く障害もあるようです。ただし、安全上限量は成人で100mgとされており、1日1000mg以上の相当量のビタミン剤での摂取を続けた場合に限ります。

【多く摂取できる食物】

  • カツオなどの赤みの魚、ヒレ肉やささみなどの脂の少ない肉
  • バナナやキウイなどの果物
  • さつまいもや玄米など

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f. ビオチン(ビタミンB7、ビタミンH)

ビオチンは水溶性ビタミンB群の一種で、以前はビタミンB7と呼ばれていましたが、現在では一般的にビオチンと呼ばれています。後に皮膚病を予防するための成分で発見されたことから、ドイツ語で皮膚の「Haut」の頭文字を取ってビタミンHとも呼ばれます。性質としては、水に溶けやすく、熱や光などには安定しています。

【働き】ビオチンは糖、アミノ酸、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜を維持することで、皮膚や髪、爪などの健康を助けます。皮膚に対しては特に、炎症を抑える作用もあるとされています。

【1日必要摂取量】成人:50μg

【欠乏症】ビオチンが欠乏すると、皮膚や髪の維持に関与することから、脂漏性皮膚炎脱毛などが出現します。また、成人では精神症状として、抑うつや無気力も報告されています。さらに、免疫系疾患として、リウマチシェーグレン症候群クローン病などが起こることもあります。

【一緒に摂ると良いもの】

  • 酪酸菌(ミヤBM):ビオチンは腸内で乳酸菌などにより消費されます。よって、酪酸菌により体内への吸収を促進します。
  • ビタミンC:上記の酪酸菌とビオチンを組み合わせ、相乗効果によりニキビやアトピーの治療に用います。

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g. 葉酸(ビタミンB9)

葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、ビタミンB12とともに赤血球の合成を助けます。このことから、「造血ビタミン」とも呼ばれます。植物の葉に多く含まれており、微生物でしか合成されません。光によって分解され酸性下では熱にも不安定です。よって栄養価を保つためには、具材の保管場所や調理過程などに注意が必要です。

【働き】葉酸ビタミンB12と協力して赤血球のヘモグロビン生成を補助します。また、DNAなどの核酸やタンパク質合成を促進することで、細胞の産生や再生を助けます。神経系にも働きかけ、細胞の再生を助けるため、妊婦や胎児にとって特に重要な役割を果たします。さらに、最近では動脈硬化の原因となる物質を他物質に変換することも分かっており、脳や心臓疾患予防にも期待されています。

【1日必要摂取量】成人:240μg、妊娠の疑いまたは妊娠している方はその倍量

【欠乏症】葉酸の欠乏症には、ビタミンB12と同様に巨赤芽球性貧血が起き、動悸や息切れ、疲労感などが出やすくなります。特に妊娠初期の母親が不足すると、その胎児が無脳症や二分脊椎症などの先天性疾患のリスクを高めます。よって上記のように、妊婦の必要量が通常成人の倍量に設定されています。

【過剰症】通常の食事では、過剰な分の葉酸は尿で排泄されるため問題はありません。ただし、サプリメントで過剰に摂取し過ぎると、亜鉛の吸収不足を引き起こしたり、ビタミンB12欠乏の発見を遅らせる可能性があります。妊婦であっても1日1000μgを超えない方が良いとされています。

【多く摂れる食品】

  • 鶏や牛、豚などのレバー
  • のり、ワカメなどの海藻類
  • ブロッコリー、ほうれん草、アスパラガスなどの緑黄色野菜
  • 大豆、納豆などの豆類
  • マンゴー、イチゴなどの果物

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h. ビタミンB12(シアノコバラミン

ビタミンB12はコバルトを含むビタミンの総称で、赤色を呈し、水溶性ビタミンに属するが、水にやや溶けにくい性質も持ちます。また、腸内細菌でも生成されることが知られています。

【働き】ビタミンB12DNAの生成を助けるほか、ヘモグロビンや新しい赤血球の生成を促進する「造血作用」があります。神経細胞にも関わり、索軸を取り囲む脂肪膜の生成や、神経細胞核酸やリン酸の生成を促進し、末梢神経を修復します。また、脳の発育にも関与します

【1日必要摂取量】成人:2.4μg

【欠乏症】ビタミンB12の欠乏症には、貧血や末梢神経障害があります。貧血は「巨赤芽球貧血」と呼ばれ、動悸や息切れ、疲労感などが症状として現れます。末梢神経障害では、手足先のしびれや痛みが起こります。また、脳にも影響が及び、記憶減退や集中力低下などの症状も見られます。

【過剰症】ビタミンB12の吸収は、内因子によって調整されます。内因子と結びつかないと吸収されないため、食事からの過剰摂取でも一定以上は吸収されません。そのため、通常の食事からの摂取での健康被害は基本的にはありません。

【多く摂れる食品】

  • しじみあさりなどの貝類
  • イワシやアジなどの青魚類、牛や豚レバーなどの肉類
  • チーズやヨーグルトなどの乳製品や卵類
  • 海苔などの海藻類

※野菜・芋類・キノコ類などの植物性に食品には含まれません

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i. ビタミンC(アスコルビン酸

ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、オレンジ果汁の中に壊血病を防ぐ因子として初めて発見されました。水に溶けやすく、熱や光に非常に敏感であり、保存や加工調理などで容易に失われる性質があります。また、ヒトの体内ではビタミンCを作る酵素を持たないため、定期的に摂取しなければなりません。

【働き】

  • コラーゲン産生の促進:コラーゲンは皮膚、骨、血管など多くの組織の構成要素であり、皮膚や血管の健康維持に重要です。
  • 抗酸化作用:ビタミンCは酸化されやすい性質を利用して、体内で細胞の酸化を防ぎ、老化や動脈硬化の予防に役立ちます。
  • 免疫機能の強化:好中球やリンパ球などの免疫細胞を活性化させ、体の免疫力を向上させます。

【1日必要摂取量】成人:100mg

【欠乏症】

  • 壊血病や皮下出血:コラーゲンの欠乏により、血管が脆くなり、壊血病や皮下出血のリスクが高まります
  • 免疫力低下:感染症に対する抵抗力が低下し、かぜなどの病気にかかりやすくなります。
  • 筋力低下:長期間のビタミンC不足により筋繊維が弱くなり、筋力が低下する可能性があります。
  • その他、疲労感やイライラ感などの症状が現れることもあります。

【過剰症】基本的には摂りすぎても尿として排出されるため、問題はありません。ただし、大量摂取すると胃の不快感や下痢が起こる場合があります。

【併用すると良いもの】

  • 鉄分:コラーゲン合成に必要なアミノ酸の生成には、ビタミンCとともに鉄分も必要です。これにより、コラーゲン合成が促進されます。
  • ビタミンP(フラボノイド):ビタミンCの効果を持続させるのに役立ちます。天然の食品では、これらの成分が一緒に存在しています。

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3. ビタミン剤って合成のものと天然のものとどちらが良いの?

各ビタミンの特性についての理解が進みました。次に、自身の体調や栄養状態に応じて、どのビタミンが不足しているかを把握し、それに合ったビタミン剤を選択する必要があります。

ビタミン剤を選ぶ際に、多くの人が天然由来のもののほうが効果的だろうと考えるかもしれません。しかし、実際には一部のビタミンを除いて、その違いはさほど大きくありません。化学式としてはどちらも同じあり、天然由来のビタミンは体内でより容易に吸収される形で存在していますが、それほど劇的な違いはないのです。以下に、天然と合成のビタミンで留意すべき点や、誤解されがちな情報があるビタミンをいくつか紹介します。

⑴ビタミンE

主成分のα-トコフェロールは、天然のものが効果が高い「d体」で存在します。一方、合成のビタミンEは「dl体」であり、効果がやや低いとされています。そのため、天然由来のビタミンEがより効果的であると言えます。ビタミン剤の成分表で「d-α-トコフェロール」と表示されているものが天然由来であり、「dl-α-トコフェロール」と表示されているものが合成ものです。

葉酸(ビタミンB9)

葉酸に関しては、合成されたもののほうが吸収率が2倍ほど高いとされています。天然の葉酸は、レバーや野菜、果物などから摂取されますが、吸収効率が低い傾向があります。そのため、葉酸を効率よく摂取するには、合成されたビタミン剤が適しています。ただし、妊娠後期に合成葉酸を摂りすぎると胎児の喘息リスクが増加する可能性があったり、合成葉酸を吸収するための酵素が日本人は少ない報告もあるため、バランスのとれた食事が重要です。

⑶ビタミンC

SNSやインターネット上では、合成ビタミンCが発がん性を持つという意見が存在します。しかし、これは完全な誤解です。厚生労働省も合成ビタミンC自体に発がん性はないと発表しています。ただし、一部の飲料に保存料としてビタミンCが使用されている場合、同時に使用される安息香酸ナトリウムと相互作用して発がん性のあるベンゼンが生成される可能性があります。しかし、公的試験によると、保存料として両者が含まれる製品でも発がんリスクは非常に低いことが示されています。よって、通常の飲料製品では問題はほとんどありません。どうしても気になる方は、保存料に安息香酸ナトリウムが入っていないものを選ぶとより安全ですね。

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4. ビタミンは必要摂取量だけ摂れば十分なの?

前述で1日必要摂取量を記載しましたが、あくまでこれは欠乏症を出現させず、各ビタミンの通常の働きを十分出すためのものです。さらに、ある目的や治療として摂取するなら話すは別で、一部では必要摂取量の何倍も摂る必要があります。以下はその目的や疾患ごとに必要量を記していきます。

掌蹠膿疱症:ビオチンとして4.5〜6g

掌蹠膿疱症は治療法の少ない疾患の一つであり、その中でもビオチンの大量摂取による治療法が確立されております。ただし、現状では保険適応は通っておらず、皮膚科などでは1g/日しか処方されないために、その治療に対しては完全に不足します。よって自費で保険外適応を受けるか、サプリで補う必要があります。また乳酸菌以外の酪酸菌などの整腸剤やビタミンCと併用するとより効果的です。

⑵ 末梢循環障害:ビタミンEとして150〜300mg

手足の冷えやしもやけなどの症状がある場合、通常の食事から必要な量を摂取するのは難しいです。それ故に処方薬やサプリメントを利用しましょう。

⑶ 末梢神経障害:ビタミンB12として750〜1500μg

手足の感覚鈍化やしびれなどの症状がある場合、大量のビタミンB12が必要となります。こちらも通常の食事からの摂取では困難なため、医師に相談して薬や適切なサプリメントを利用しましょう。

統合失調症抑うつナイアシンとして最大3000mg

体内の大きなエネルギー源の役割を果たすATPは、脳内でもとても多く消費されます。よって、ATP産生に関与するナイアシンの大量投与で一部の神経障害が改善した報告もあります。こちらは保険外となり、専門医と相談して摂取していくと良いです。

⑸ ニキビ、美肌(しわ、たるみなど):ビタミンCとして1000mg

美肌やニキビの改善には、通常の必要摂取量では不十分です。バランスの取れた食事とともに、ビタミンCのサプリメントを摂取することで効果を期待できます。

特に美肌には、色素であるメラニンの生成を抑えてくれるトラネキサム酸と併用するとより効果的です。

ニキビの場合は皮膚のターンオーバーを活性化させたり、過剰な脂質を抑える効果のあるビタミンB2とB6を一緒に摂るとより効果的になります。

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5. ビタミンは不足しているものだけ摂れば良い?

ビタミンを効果的に摂取するためには、単に不足しているビタミンだけを補給するだけではなく、栄養素のバランスを考える必要があります。ビタミンは体内で相互作用し合い、効果を発揮するためには他の栄養素との組み合わせが重要です。例えば、葉酸の吸収にはナイアシンビタミンB12が必要であり、ビタミンB6の働きにはビタミンB2が必要です。特にビタミンB群では、互いに補い合う関係にあります。また、ビタミンCはビタミンEの抗酸化作用を助けるなど、相乗効果が期待されることもあります。そのため、バランスの良い食事から多様な栄養素を摂取することが基本です。必要な栄養素が不足している場合には、マルチビタミンを摂取し、さらに必要な場合には特定のビタミンに特化したサプリメントを補給することが適切です。

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6. ビタミンについてのまとめ!

  • ビタミンは基本は食生活で摂るべきであり、サプリはあくまで補助剤である
  • ビタミンには脂溶性と水溶性と大きく2種に分類される
  • 脂溶性は油などの脂質と一緒に摂ると吸収が上がり、水溶性は尿で排出されやすいため過剰症はないが定期的に摂取する必要がある
  • 各ビタミンには1日必要とされる摂取量が設定され、満たさない状態が続くと欠乏症が出やすくなる
  • ビタミン剤において天然と合成ものは、一部を除きそれほど効果に大差はない
  • ビタミンは互いの生成や働きを補い合っていることが多いため、それ単体よりマルチビタミンで摂った方が効果は高い
  • 一部疾患や美容などを目的とする場合、必要量よりかなり多い量が不可欠となる

ずいぶん長くなってしまいましたが、自分が不足している、知らない部分だけでも読んでいただけると幸いです。これを読んで更なる健康な体を手に入れましょう。また、こういうものを取り扱ってほしい!などがあればコメントでよろしくお願いします。